3条 お酒はほどほどに
飲酒は、大腸がんをはじめとした各種がんの発生リスクを上昇させます。また、飲酒量が多いと、がんや循環器疾患による死亡リスクが高まることもわかっています。お酒を飲む人は、1週間あたり日本酒換算で7合程度の節度ある飲酒を心がけましょう。
飲酒はがん全体や大腸がん、肝臓がん、食道がんの発生リスクを上げる
世界的に見ても、飲酒は各種がんのリスクを上げることがわかっています。日本人を対象とした複数の疫学研究などに基づく、飲酒のがん発生への因果関係の確からしさについての評価では、肝臓がん、大腸がん、食道がん発生への影響は「確実」とされています(科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究 参照)。そして、「飲酒によりがん全体のリスクが上がることは確実」と評価されています。
日本人男性を対象としたコホート研究* では、お酒を「時々飲む」人と習慣的に飲む人とで、がん全体の発生リスクについて比較しています。それによると、男性では、1日あたりの平均アルコール摂取量が、日本酒換算で2合未満であれば発生リスクはさほど上昇しませんが、2合以上3合未満の飲酒で約1.4倍、3合以上の飲酒では約1.6倍も上昇することが示されています。
これらの飲酒量に該当する人の割合を考え合わせると、日本人男性のがんの13%程度が、1日2合以上の飲酒習慣によってもたらされていると推計されます。なお、女性では、はっきりした傾向が見られませんでしたが、これは定期的に飲酒する人が男性ほど多くないためと考えられます(「飲酒とがん」 参照)。
また、飲酒習慣に加えて喫煙習慣もあるかどうかによって、がんの発生リスクを分析した結果によると、非喫煙者では飲酒量が増えても必ずしもがん発生率が上昇しないものの、喫煙者では飲酒量が増えれば増えるほどがん(特に食道がん)の発生率が高くなることがわかっています(JPHC Study「飲酒とがん全体の発生率との関係について」 参照)。
飲酒は適量にして、喫煙者は禁煙しましょう。たばこを吸わない人も、たばこの煙が充満している居酒屋などでの飲食は避けるようにしましょう。
* コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの
飲酒量が増えるとがんや循環器疾患による死亡リスクが上がる
昔から「酒は百薬の長」といわれ、適量の飲酒は脳梗塞や心筋梗塞を予防すると言われています。
日本の6つのコホート研究を統合して、飲酒と死亡(死亡全体、がんによる死亡、心筋梗塞などの心疾患による死亡、脳卒中などの脳血管疾患による死亡)との関連を調べたところ、男性の場合はいずれも、飲酒量が増えるにつれていったん死亡のリスクが下がるものの、さらに飲酒量が増えるとリスクが上がるという関連が見られました。
飲まない人よりも死亡リスクが高くなった飲酒量は、男性では全死亡・心疾患死亡では1日あたり日本酒換算で3合以上、がん死亡・脳血管疾患では2合以上でした。男性では、全死亡の5%が、2合以上の飲酒によってもたらされていると推計されています。
また、女性では全死亡と心疾患死亡で男性同様の関連が見られ、1日あたり日本酒換算で1合以上の飲酒から死亡リスクが高くなっていました(科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究「飲酒と死亡リスク」 参照)。
健康のためには、1日あたり日本酒なら1合、ビールなら大びん1本、焼酎や泡盛なら2/3合、ウイスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度にとどめるのがよいでしょう。
毎日飲むのであれば1日1合程度とし、それ以上飲む日があるなら、休肝日を設けて週あたり7合程度になるようにしましょう。