文字サイズ

肺がんは、喫煙者だけでなく、非喫煙者も要注意

肺がんは、喫煙者だけでなく、非喫煙者も要注意

受動喫煙でもがんの発生リスクは確実に増加

たばこは、喫煙する本人だけでなく、受動喫煙による周囲への健康被害も大きな問題です。非喫煙者の女性を対象とした日本のあるコホート研究では、夫が喫煙者の人は、そうでない人の1.3倍肺がんの発生リスクが高くなることがわかりました。

さらに、肺がんの約8割を占める肺腺がん(肺の末梢に多くできるがん)については、喫煙者の夫を持つ非喫煙者の女性が罹患した場合、37%が夫からの受動喫煙によるものと推定されました。夫が非喫煙者の人と比較すると、夫の喫煙本数が1日20本未満の場合は1.73倍、20本以上では2.2倍と、本数が多いグループほどリスクが高いことが示されています。

禁煙は、思い立ったが吉日!

たばこは、これほどまでに肺がんと密接に関係していますが、裏を返せば、禁煙すると肺がんの発生リスクが確実に低下するということです。

実際に、ヘビースモーカーの人であっても、少しでも早く禁煙するほど、がんの発生リスクが確実に低下するという研究報告があります。禁煙した人を経過年数で分けて肺がんの発生率を比較したとき、禁煙から 9年以内の人は非喫煙者の3倍、10~19年では1.8倍、20年以上では非喫煙者とほぼ同等となるのです。

平成28年度4月から、34歳以下の禁煙治療における保険適用の条件が拡大され、若い人でも禁煙治療を受けやすくなりました。喫煙習慣のある方は、今すぐ禁煙を。喫煙しない方は、受動喫煙にはくれぐれも注意しましょう。

なお、以前はβ-カロテンが肺がんの発生リスクを下げると期待されていましたが、喫煙者などすでにリスクの高い人がβ-カロテンを過剰に摂取(1日に20~30mg)すると、かえって肺がんの発生リスクが高まるという研究結果があります。禁煙にまさる肺がん予防法はありませんので、サプリメントなどでβ-カロテンを摂りすぎないよう注意しましょう。

山本 晴義 先生

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究補助金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞受賞。一般向けの主な書著に『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。