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乳がんの予防には、たばこを避け、適度な運動と大豆製品の摂取を

乳がんの予防には、たばこを避け、適度な運動と大豆製品の摂取を

女性がかかるがんの中で、もっとも多い乳がん。喫煙や受動喫煙、閉経後の肥満がリスクを高める可能性がある一方、適度な運動と大豆製品の摂取によりリスクが低下する可能性があることがわかっています。また、定期的に乳がん検診を受け、早期発見に努めることが大切です。

「乳がん」は女性がかかるがんの第1位

がんの罹患数を部位別に見ると、女性でもっとも多いのが乳がんです。乳がんは近年、増加傾向にあり、2011年の罹患者数は約7万2千人となっています(国立がん研究センターがん対策情報センター「地域がん登録全国推計によるがん罹患データ」による)。

乳房は、出産した際、母乳(乳汁)を分泌する皮膚の付属器官です。その構造は、乳汁をつくる乳腺、乳汁を運ぶ乳管、乳腺組織を構成する腺葉や小葉、脂肪などからなっています。

乳がんにはいくつかのタイプがありますが、乳管から発生する「乳管がん」がもっとも多く見られます。女性では、乳がんは30歳代から徐々に増加し、40歳代後半から50歳代前半でピークとなります。

女性ホルモンにさらされる期間が長いほどハイリスクに

乳がんの発生には、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンが深くかかわっています。そのため、初潮が早い、閉経が遅い、高齢初産、妊娠・出産の経験がない、高身長(成長期の発育が良いと、初潮が早くなりやすい)など、エストロゲンにさらされる時期が長い人ほど、乳がんの発生リスクが高くなります。また、経口避妊薬の使用、閉経後の女性ホルモン補充療法などで体外から女性ホルモンを追加することも、リスクを高めます。

さらに、閉経後は女性ホルモンの分泌量が減少しますが、脂肪組織や副腎、卵巣に存在するアロマターゼという酵素が、副腎皮質から分泌される男性ホルモンをエストロゲンに変える働きをするため、閉経後の肥満も乳がんのリスク因子となります。

一方、授乳により、乳がんのリスクが低くなることもわかっています。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。