乳がんの予防には、たばこを避け、適度な運動と大豆製品の摂取を
禁煙・受動喫煙防止と適度な運動、大豆製品の摂取でリスクが低下
生活習慣では、喫煙や受動喫煙によってリスクが高まる可能性があるとされています。そのため、乳がんを予防するには、まずはたばこを吸っている人は禁煙すること。そして、吸わない人も他人のたばこの煙を避けることが大切です。
飲酒も、乳がんリスクを高めることが知られており、国立がん研究センターが行っている多目的コホート研究*によると、飲酒量が多い、つまり「エタノール換算で週150gより多く飲酒」するグル-プでは、「飲んだことがない」グル-プに比べて、乳がんリスクが1.75倍高いことが示されています。ほかのがんや病気を予防するためにも、飲酒は適量(1日あたり日本酒なら1合、ビールなら大びん1本、焼酎や泡盛なら2/3合、ウイスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度。それ以上飲む日があるときは、休肝日を設けて週あたり日本酒換算で7合程度)にとどめましょう。
また、適度な運動と、大豆製品の摂取は、乳がんのリスクを下げる可能性があります。 国立がん研究センターが行っている多目的コホート研究では、運動習慣が「月3回以内」のグループに比べ、「週3日以上」のグループでは乳がんのリスクが0.73倍になっていました。
運動によって乳がんのリスクが減少する詳しいメカニズムは、まだ解明されていません。しかし、運動習慣によって適正な体重を維持することは、乳がんに限らず、さまざまな生活習慣病の予防にも役立ちます。特に、閉経後や太り気味の女性は、運動習慣を身につけるとよいでしょう。
大豆製品の摂取に関しては、大豆製品に含まれるイソフラボンという成分の摂取量が多い女性ほど、閉経後に発生する乳がんのリスクが低いということが、アジア人を対象とした複数のコホート研究で示されています。イソフラボンは、化学構造がエストロゲンとよく似ています。そのため、イソフラボンを多く摂取することで、乳腺細胞のエストロゲン受容体に、エストロゲンより先にイソフラボンが結合し、エストロゲンの働きを弱めるのではないかと考えられています。
ただし、イソフラボンをとり過ぎてしまうと逆効果になる可能性があります。ふだんの食生活の中で、大豆や大豆製品から適量をとり、サプリメントなどで過剰に摂取することのないよう気をつけてください。
*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの
40歳以上は2年に1度検診(マンモグラフィ)を
乳がんは、がんの中でも死亡率が比較的低く、5年生存率は約93%、10年生存率は約80%となっています(国立がん研究センターがん対策情報センター「全がん協部位別施設別生存率」による)。いずれにしても、早期発見、早期治療が重要であることは言うまでもありません。40歳以上の女性は、2年に1回は乳がん検診を受けることが勧められます。
また、20歳を超えたら毎月、月経後数日以内に、乳房にしこりや皮膚の異常がないか、血の混じった乳頭分泌液がないかなど、自身でチェックするようにするとより安心です。