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前立腺がんは、確立された予防法はないが、経過が良好なことが多い

前立腺がんは、確立された予防法はないが、経過が良好なことが多い

前立腺がん検診にはメリット、デメリットがある

では、前立腺がんを少しでも早期に発見するために、積極的に検査を受けたほうがよいのかというと、必ずしもそうとは言い切れません。なぜなら、前立腺がんは男性であれば加齢とともに発生する可能性は高くなりますが、命にかかわるほど悪性のものはけっして多くはないからです。臨床病期別5年相対生存率(全国がん(成人病)センター協議会加盟施設2004~2007年診断例)においても、ステージⅠからⅢまでは100%で、遠隔転移のあるステージⅣ(全体の約1割)においても62%でした。また、病理解剖により前立腺を調べると、50歳代8%、60歳代31%、70歳代44%、80歳以上で59%の日本人に、前立腺がんが潜在しているというデータが示されています。

前立腺がんを診断するPSA検査は、安価で、受診者への負担も少なく、手軽に受けることができます。しかし、PSA検査で前立腺がんが疑われると、針生検などの精密検査を受けることになり、痛みを伴うほか、場合によっては合併症のリスクもあります。また、前立腺がんと診断され治療を受けることによっても、さまざまなデメリットが起こる可能性があります。

先ほども述べたとおり、前立腺がんは家族歴が確立されたリスク要因であり、遺伝的要因で発生する割合は42%とされています。もし、親兄弟が、比較的若い年齢で前立腺がんにより亡くなっているという場合には、PSA検査を受けることも必要かもしれません。

前立腺がん検診受診を考える際には、そのようなメリットとデメリットをよく比較しましょう。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。