お酒の適量って? “休肝日”があるほうががんになりにくい?
昔から「酒は百薬の長」といわれるとおり、適量であれば健康によい効果をもたらしてくれます。しかし、飲みすぎてしまっては逆効果。大量飲酒の習慣は、がんの発生リスクを高めることがわかっています。がんのリスクを下げるには、休肝日を設けながら適量を守りましょう。
飲みすぎれば、がんリスクが上がるのは「確実」
厚生労働省が公表した「平成28年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、飲酒習慣のある人のうち、生活習慣病のリスクを高めるほどの量を飲んでいる人の割合は、男性で14.6%、女性で9.1%。これを平成22年からの推移でみてみると、男性はほぼ横ばいですが、女性は増加傾向にあります。
飲酒は、適度であればストレス解消になる人もいるほか、食欲増進や血行促進といった健康効果も得られます。また、脳梗塞や心筋梗塞を予防するという多くのエビデンスがあります。しかし、それはあくまでも「適量を守る」ということが前提。飲みすぎれば、確実に心身の健康を損ねる危険が高くなります。
国立がん研究センターの「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」では、飲酒によりがん全体のリスクが上がることは「確実」、部位別では肝臓がん・大腸がん・食道がん発生への影響も「確実」とされています。
女性は飲酒量が多いと乳がんリスクが高まるという報告も
日本人男性を対象としたコホート研究*1では、「ときどき飲む(週に1日以下)人」と習慣的に飲む人のがん全体の発生リスクとの関連を調べています。摂取量別に比較した結果、1日あたりの平均アルコール摂取量が日本酒換算で2合以上3合未満の人は約1.4倍、3合以上の人は約1.6倍、がん全体の発生リスクが上昇することが示されました。
また、飲酒と肝がんリスクの関係について、4つのコホート研究のデータを合わせたプール解析*2があります。これによると、お酒を「たまに飲む(週1回未満)」人に比べて、男性では多量飲酒者(1日あたりのアルコール摂取量が日本酒換算で3合以上)で1.7倍、女性では中程度(同1合以上)で3.6倍もの肝がんリスクが上昇しました。
さらに、女性は乳がんにも注意が必要です。世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究機構(AICR)が共同で実施した最近の報告では、毎日10gのアルコール摂取で、乳がん発生のリスクが上昇(閉経前で5%、閉経後で9%)するという結果に。10gのアルコールとは、ワインなら小さいグラス1杯、ビールなら約240mLに相当し、飲酒量が増えるほどリスクはさらに大きくなるとされています。日本人女性を対象としたコホート研究でも、「週に純アルコール換算で150gより多い飲酒」で乳がんリスクが1.8倍であったという報告があります。
*1 コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの
*2 プール解析…複数の研究データを、あらかじめ定めた共通のルールにのっとって解析するもの