野菜や果物をたくさんとれば、がんを予防できる?
国立がん研究センターの「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」では、野菜や果物の摂取によるがんリスクの低下は、食道がんで「ほぼ確実」、胃がんで「可能性あり」と評価されています。しかし、たくさんとればとるほど予防効果があるかどうかは明らかになっていません。国が推奨する「1日350g」を目標に野菜をとりつつ果物も加え、バランスのとれた食生活を心がけることが大切です。
野菜・果物の摂取量が多いと食道がんリスクが半減
野菜や果物の摂取と、食道がんの発生との関連を調べた、国立がん研究センターの多目的コホート研究*1があります。この研究では、野菜・果物の1日あたりの摂取量の合計とそれぞれの摂取量によって3つのグループに分け、日本人の食道がんの大半を占めている扁平上皮がんのリスクを比較しました。その結果、野菜と果物の合計摂取量が最も少ないグループと比較して、最も多いグループでは扁平上皮がんの発生リスクが約半分に低下しました。また、野菜と果物の摂取量が1日あたり100g増加するごとに、扁平上皮がんのリスクが約10%ずつ低下していました。
一方、胃がんについては、野菜・果物の摂取頻度と胃がんの発生の関連を調べた多目的コホート研究があります。それによると、黄色野菜(かぼちゃやにんじんなど)では摂取頻度に応じて段階的にリスクが低下していましたが、緑色野菜(ほうれん草など)や、ほかの野菜(白菜、キャベツ、トマトなど)・果物は、ほとんど食べない人に比べて週1日以上食べる人ではリスクの低下が見られましたが、それ以上高頻度であっても差が見られませんでした。
上記を含めた複数の研究結果に基づき、日本人における野菜・果物摂取のがん予防効果については、食道がんでは「ほぼ確実」、胃がんで「可能性あり」と評価されています(また、果物については、肺がんで「可能性あり」と評価されています)。
*1 コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの
一部の乳がんにリスク低下は見られるものの、慎重な判断が必要
また、45歳から74歳の女性約4万7000人を対象に、野菜・果物の摂取と乳がん発生との関連を調べた多目的コホート研究もあります。これによると、野菜と果物をあわせた総摂取量と乳がんリスクとの間には、関連は認められませんでした。また、摂取するものを、アブラナ科の野菜*2、緑葉野菜、黄色野菜、トマト類、柑橘類と種類ごとに分けてみても、有意な関連はみられませんでした。
しかし、閉経前と閉経後に分けてみると、閉経前の女性では、アブラナ科の野菜の摂取量が最も少ないグループと比較して、最も多いグループでは乳がんのリスクが低下しました。また、乳がんのタイプ別で見てみると、アブラナ科の野菜の摂取量が多いほど、ホルモン依存性乳がん*3のリスクが低いことがわかりました。さらに、食物繊維摂取量と乳がんリスクとの関連を調べてみると、食物繊維摂取量が非常に多いグループでは、乳がんリスクの低下がみられました。
ただし、閉経前後や乳がんのタイプ別の検討、食物繊維摂取量の非常に多いグループでは解析対象者が少ないため、上記の結果については慎重に判断する必要があります。
*2 アブラナ科の野菜…ブロッコリー、キャベツ、芽キャベツ、菜の花、大根、かぶ、小松菜、野沢菜など
*3 ホルモン依存性乳がん…女性ホルモンのエストロゲンの刺激によって増殖するタイプの乳がん