10年間に肝がんを発生する確率─肝炎ウイルス感染や生活習慣が影響
肝がんは、ほとんどが肝炎ウイルス(特にC型肝炎ウイルス)の持続感染によるものですが、生活習慣の違いによっても発生する確率が変わってきます。そこで、年齢や性別、肝炎ウイルス感染、生活習慣などの8つの因子によって、10年間に肝がんを発生する確率を予測できるツールが、国立がん研究センターによって開発されています。自身の生活習慣を見直すきっかけとして、利用してみましょう。
簡単な計算で肝がんの発生確率を予測できる
日本人の肝がんの原因は、その多くが肝炎ウイルス、なかでもC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染によるものであることがわかっています。一方で、肝がんのうちの約15%は肝炎ウイルス以外が原因であることも報告されています。肝炎ウイルス以外の肝がんの危険因子としては、飲酒や肥満、糖尿病といった生活習慣に関連する要因が挙げられます。
これらを踏まえ、国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究グループでは、肝炎ウイルスの感染の有無と生活習慣因子から、10年間で肝がんを発生する確率を予測するスコアシートを開発しました。
これは、肝がんの発生リスクとの関連が明らかになっている、あるいはその可能性が高いと考えられる因子である「飲酒習慣、BMI、糖尿病、コーヒー飲用習慣、B型肝炎ウイルス(HBV)感染、HCV感染」に、「年齢、性別」を加えた8つの因子を用い、簡単な計算で肝がんの発生確率を予測できるものです。
【ステップ1】
8つの因子の各項目について、該当する点数を求めます。
年齢 | 40~49歳 | 0点 | 計 点 |
---|---|---|---|
50~59歳 | 2点 | ||
60~69歳 | 3点 | ||
性別 | 女性 | 0点 | 計 点 |
男性 | 2点 | ||
飲酒習慣(*1) | 飲まない | 1点 | 計 点 |
以前飲んでいた | 1点 | ||
飲む(週に150g未満) | 0点 | ||
飲む(週に150g以上450g未満) | 0点 | ||
飲む(週に450g以上) | 2点 | ||
BMI(*2) | 25kg/m2未満 | 0点 | 計 点 |
25kg/m2以上 | 1点 | ||
糖尿病(*3) | なし | 0点 | 計 点 |
あり | 1点 | ||
コーヒー飲用習慣 | 飲まない | 0点 | 計 点 |
週1回以上、毎日は飲まない | 0点 | ||
毎日1杯以上 | -1点 | ||
HBV感染(*4) | 陰性 | 0点 | 計 点 |
陽性 | 4点 | ||
HCV感染(*4) | 陰性 | 0点 | 計 点 |
陽性 | 6点 |
【ステップ2】
8項目の点数を合計します。
合計 | 点 |
---|
【ステップ3】
合計点数から、10年間で肝がんが発生する確率予測が導き出されます。
合計点数 | 10年間における発生確率 | 合計点数 | 10年間における発生確率 |
---|---|---|---|
-1点 | 0.1%未満 | 10点 | 2.9% |
0点 | 11点 | 5.4% | |
1点 | 12点 | 9.8% | |
2点 | 13点 | 17.5% | |
3点 | 14点 | 30.2% | |
4点 | 15点 | 49.0% | |
5点 | 0.1% | 16点 | 71.6% |
6点 | 0.2% | 17点 | 90.5% |
7点 | 0.4% | 18点 | 98.8% |
8点 | 0.8% | 19点 | 99.9% |
9点 | 1.6% |
*1 飲酒量は、アルコールの種類(濃度)も考慮して週当たりのエタノールの総量で表します。以下の表には、1週間でエタノール量が300g近くになる飲酒量の目安を示しているので、参考にしてください。
お酒の種類 (単位量) |
単位あたりの エタノール量(g) |
一日あたりの 合(本・杯)数 |
毎日飲んだ場合の 週当たりのエタノール量(g) |
---|---|---|---|
日本酒(1合、180ml) | 23 | 2合 | 322 |
ビール(大瓶、633ml) | 23 | 2本 | 322 |
ウイスキー(シングル、30ml) | 10 | 4杯 | 280 |
ワイン(グラス、60ml) | 6 | 7杯 | 294 |
焼酎・泡盛(原液1合、180ml) | 36 | 1合 | 252 |
*2 BMI=体格指数。体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出
*3 「糖尿病あり」は、糖尿病の既往がある人、血液検査で血糖値が100mg/dl以上(空腹時)または140mg/dl以上(空腹時以外)だった人
*4 HBV=B 型肝炎ウイルス、HCV=C型肝炎ウイルス
(国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究グループ「10年間で肝がんを発生する確率について-危険因子による個人の肝がん発生の予測-」より作成)