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10年間に肝がんを発生する確率─肝炎ウイルス感染や生活習慣が影響

10年間に肝がんを発生する確率─肝炎ウイルス感染や生活習慣が影響

肝炎ウイルスの有無にかかわらず、生活習慣も見直しを

このスコアシートで算出してみると、同じ年齢、性別であっても、肝炎ウイルスの有無、あるいは生活習慣によって肝がんになる確率に差が生じるということがわかります。ただし、これら8つの因子以外にも、体質や食事、肝炎ウイルス感染治療など、今回考慮していない別の因子の影響を受けることも十分に考えられます。

以上のような限界はありますが、このスコアシートを通じて、肝がんの危険因子について知ること、また、肝炎ウイルス感染がない場合も、生活習慣の違いによって肝がんの発生確率に差が出るということを実感することはとても大切です。

国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究グループでは、肝炎ウイルス感染者を対象とした同様のスコアシート(HCV感染者における肝がん発生確率算出のためのスコアシート)も作成しているので、対象となる人は参考にしてみてください。

肝がん予防の第一歩は、肝炎ウイルス検査を受けること

肝炎ウイルス感染については、既に効果的な治療法が開発されており、たとえ感染していても適切な治療によって肝がんの発生リスクは下がります。さらに、国では、平成30年度の新規事業として、「肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業」を実施することを決定しました(平成30年12月に事業開始)。これは、肝炎ウイルスによる肝がん・重度肝硬変の患者の多くが、長期間にわたり肉体的、精神的、経済的な負担を強いられていることを踏まえ、患者の医療費の負担軽減を図るとともに、治療研究を促進するための仕組みを構築することを目的としています。

将来的により効果的な治療法が開発されることが期待されますが、肝炎ウイルス検査を一度は受けておくことに加え、肝がんの危険因子を正しく理解し、生活習慣を改善するよう心がけて、肝がんを予防しましょう。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。