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授乳と乳がん─リスク低下の“可能性あり”

授乳と乳がん─リスク低下の“可能性あり”

授乳で確実に予防できるわけではないが、授乳にはがん予防以外のメリットも

乳がんの発生には、月経周期や妊娠をコントロールする女性ホルモンの一つ、エストロゲンが深くかかわっています。エストロゲン濃度が長期にわたって高い状態が続いていると、乳がんの発生リスクが高まりますが、エストロゲンは、妊娠・授乳期には分泌量が減ることがわかっています。そのため、出産・授乳経験がない、初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、初産年齢が遅い、といったことが乳がんのリスク要因となります。

授乳には、全身のエストロゲン濃度を低下させるほか、「プロラクチン」というホルモンを増加させて排卵を抑制する作用などもあるため、乳がんリスクが低下すると考えられていますが、そのメカニズムは、よくわかっていません。

また、授乳経験がある、あるいは授乳期間が長ければ乳がんにならないというわけではありません。逆に、授乳経験がない、あるいは授乳期間が短い、人工乳で育てているからといって必ず乳がんになるとも限りません。

母乳の出やすさには個人差があるので、出にくい女性が無理に努力する必要はありません。一方で、母子のスキンシップということも含め、授乳は母体と子ども双方への好影響があることもわかっています。そうしたことを考えると、育児中の女性に対しては、授乳は勧められます。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。