授乳と乳がん─リスク低下の“可能性あり”
授乳で確実に予防できるわけではないが、授乳にはがん予防以外のメリットも
乳がんの発生には、月経周期や妊娠をコントロールする女性ホルモンの一つ、エストロゲンが深くかかわっています。エストロゲン濃度が長期にわたって高い状態が続いていると、乳がんの発生リスクが高まりますが、エストロゲンは、妊娠・授乳期には分泌量が減ることがわかっています。そのため、出産・授乳経験がない、初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、初産年齢が遅い、といったことが乳がんのリスク要因となります。
授乳には、全身のエストロゲン濃度を低下させるほか、「プロラクチン」というホルモンを増加させて排卵を抑制する作用などもあるため、乳がんリスクが低下すると考えられていますが、そのメカニズムは、よくわかっていません。
また、授乳経験がある、あるいは授乳期間が長ければ乳がんにならないというわけではありません。逆に、授乳経験がない、あるいは授乳期間が短い、人工乳で育てているからといって必ず乳がんになるとも限りません。
母乳の出やすさには個人差があるので、出にくい女性が無理に努力する必要はありません。一方で、母子のスキンシップということも含め、授乳は母体と子ども双方への好影響があることもわかっています。そうしたことを考えると、育児中の女性に対しては、授乳は勧められます。