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男性はBMI21~27、女性はBMI21~25─中高年期の適正体重

男性はBMI21~27、女性はBMI21~25─中高年期の適正体重

肥満はがんのリスクを高めることが明らかになっていますが、実は、やせすぎもがんのリスクを上昇させることがわかっています。そのため、がん予防のためには、適正体重を維持することが大切です。バランスのよい食事と適度な運動を習慣にして、無理なく体重をコントロールしましょう。

肥満度が高くなるほどがんのリスクが上昇

肥満はさまざまな生活習慣病の原因となることが知られており、肥満度とがんの関係についても多くの研究が行われています。それらの結果から、がん全体では、BMI*1が30以上だと男女ともにがんのリスクが上がることが示されています。

部位別にみると、大腸がんや乳がんはBMIが高くなるほど、がんの発生リスクも比例して高まることがわかっています。BMIと大腸がんの関連についての、日本の8つのコホート研究*2を併せたプール解析*3によると、BMIが「1(kg/m2)」上がるごとに発生リスクが男性で1.03倍、女性で1.02倍ずつ高くなることが示されました。

同様に乳がんについても、BMIとの関連についてのプール解析で、閉経前・閉経後のいずれも、BMIが大きくなるほど乳がんリスクも高くなる傾向が認められました。閉経前乳がんについては、BMI23以上25未満の人を基準として、最大(BMI30以上)のグループのリスクは2.25倍という結果でした。一方、閉経後乳がんではBMIが小さいグループほどリスクが低く、大きいグループほど高くなっていました。

また、20歳のときのBMIが20未満とやせていた女性は、平均体重だった女性と比べて、将来的に乳がんになるリスクが高くなることが示されたコホート研究もあります。そのため、「若いころはやせていたけれど、中年期以降に太ってきた」という女性は、一層注意が必要です。

さらに、肝がんや子宮体がんも、肥満によりリスクが高まることがわかっています。

*1 BMI:肥満度を表す体格指数。「体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)」で求められる

*2 コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

*3 プール解析…複数の研究データを、あらかじめ定めた共通のルールにのっとって解析するもの

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。