文字サイズ

喫煙者も早期禁煙で、がんリスクが「喫煙経験のない人」と同レベルに

喫煙者も早期禁煙で、がんリスクが「喫煙経験のない人」と同レベルに

喫煙はがんをはじめ、さまざまな病気の危険因子となります。しかし、禁煙すれば、徐々にがん罹患リスクが低下し始め、禁煙年数が長くなるほど下がります。また、生涯の喫煙量が少ない人ほど、禁煙の効果が早く現れやすいこともわかっています。禁煙に“遅すぎる”ということはないので、喫煙者はただちに禁煙しましょう。

男性のがん全体の約4割はたばこが原因

たばこの煙には4000種類以上もの化学物質が含まれていて、そのうち70種類以上の物質で発がん性が指摘されています。喫煙ががんをはじめ、さまざまな病気の原因になることは、多くの研究で明らかになっています。特に喫煙者が多い男性においては、喫煙とがんとの関係については数多くのエビデンスが示されています。

日本人男性を対象に、喫煙と生活習慣病とのかかわりについて調べた3つの大規模コホート研究*1のプール解析*2によると、がんによる死亡の約4割は喫煙が原因であることがわかっています(Katanoda et al. JE 2008)。がんの部位別にみると、喉頭がんや腎盂(じんう)・膀胱などの泌尿器がん、肺がんでは約7割が、食道がんでは約6割が、口腔・咽頭がんでは約5割が、喫煙が原因となっています。

男性は21年以上の禁煙でがん罹患リスクが生涯非喫煙者と同レベルに

喫煙ががんリスクを高めることは明らかですが、一方で、禁煙によりがんリスクが確実に下がる、ということもわかっています。国立がん研究センター 社会と健康研究センターでは、禁煙年数によりがん罹患リスクはどのように変化していくのかを、8つのコホート研究から約32万人のデータを合わせたプール解析によって調べました(国立がん研究センター 社会と健康研究センター「日本人における禁煙年数とがん罹患リスク」)。

この研究は、対象者の性別や喫煙状況、喫煙量(たばこの箱数×喫煙年数)や禁煙年数などによってグループ分けし、禁煙年数と「全がん(全部位のがんをあわせたがん全体)」、「喫煙関連がん全体(喫煙に関連したがん:頭頸部、食道、胃、膵、肺、子宮頸部、腎盂・尿管・膀胱、肝をあわせたもの)」、「喫煙に関連した個別の主要部位がん(食道、胃、膵、肺、腎盂・尿管・膀胱、肝)」の罹患との関連を検討したものです。

その結果、男性では、禁煙年数が21年以上のグループで、全がんおよび喫煙関連がん全体の罹患リスクが、生涯非喫煙者(人生で一度もたばこを吸ったことがない人)と同レベルまで下がることがわかりました。これを部位別でみてみると、過去に喫煙していた人のがん罹患リスクが生涯非喫煙者と同レベルになるまでにかかる禁煙年数は、部位によって異なりました。具体的には、膵がんで0~5年、食道がん、腎盂・尿管・膀胱がんで6~10年、肺がんで11~15年、胃がんで21年以上となっています。また、喫煙量別にみると、過去に喫煙していた人で1日のたばこの箱数×喫煙年数(PY)が19以内の人は、禁煙年数が16年以上でその後の喫煙関連がん罹患リスクが生涯非喫煙者と同レベルになりました。

一方、女性では、禁煙年数が11年以上のグループで、全がんおよび喫煙関連がん全体の罹患リスクが、生涯非喫煙者と同レベルまで下がることがわかりました。部位別では、男性と同じく、必要な禁煙年数は異なり、胃がんで0~11年、肺がんで11年以上となりました。

*1 コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

*2 プール解析…複数の研究データを、あらかじめ定めた共通のルールにのっとって解析するもの

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。