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自覚的ストレスとがんリスクとの関連

自覚的ストレスとがんリスクとの関連

日常的に感じているストレスの程度とがん罹患リスクとの関連を調べた研究では、ストレスレベルが高い人は、全がんの罹患リスクが高くなっていました。日頃から自分なりの方法でこまめにストレスを解消することが、がんの予防にもつながります。

5年後のストレスレベルの変化と、がん罹患リスクとの関連を分析

これまでにも、ストレスががんのリスク要因となることが示唆されてはいるものの、ストレスとがんとの関連についての研究はあまり進んでおらず、そのメカニズムははっきりわかっていません。ストレスは、あくまでも主観的なものであるため、その程度を具体的な数値などで測定することが難しい、というのがその理由の1つとして挙げられます。

そこで、国立がん研究センターでは、ストレスとがんとの関連について、多目的コホート研究によって調査しました(国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ「自覚的ストレスとがん罹患との関連について」)。これは、全国10カ所の保健所管内の40~69歳の男女約10万人を対象としたものです。

この調査では、まず、調査開始時のアンケート結果から、ストレスの程度によって対象者を3つのグループ(ストレスレベルが「低い」「中程度」「高い」)に分けました。さらに5年後の同様のアンケート結果に基づき、自覚的ストレスの変化を6つにグループ分け(ストレスレベルが「常に低い」「常に低・中」「常に中」「高が低・中に変化」「低・中が高に変化」「常に高」)、そのうえでがん罹患リスクとの関連を分析しました。なお、約18年間の追跡期間中、男女計1万7,161人にがん罹患が確認されていました。

*多目的コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

慢性的にストレスを感じている男性はリスクが約2割上昇

結果として、男性で2回ともストレスレベルが「高い」と回答したグループは、2回とも「低い」と回答したグループに比べ、がん罹患リスクが1.19倍と、約2割上昇していました。一方、同様の比較をした結果、女性は1.07倍となり、リスクの差はほとんどみられませんでした。がんの部位別でみると、とくに肝臓がんと前立腺がんで、自覚的ストレスが多いグループにリスクの上昇がみられました。

また、調査開始時に、喫煙、飲酒、体型、がん家族歴の4項目でそれぞれグループ分けし、5年間での自覚ストレスレベルの変化とがん罹患リスクとの関連を調べましたところ、「喫煙者」「飲酒者」「肥満者」「がん家族歴なし」の人で、自覚ストレスレベルが5年の間に高くなったか、いつも高い人で、がん罹患リスクが増加することもわかりました。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。