喫煙者は「肺がんリスクモデル」で自分のリスクを予測し、今すぐ禁煙を
肺がんは、世界的にみても最も死亡率の高いがんです。国立がん研究センターが作成した肺がんリスクモデルでは、10年間のうちに肺がんに罹患する確率が予測できます。年齢が高いほど、喫煙本数が多く長期間吸っている人ほどリスクが上昇するので、今すぐにでも禁煙し、肺がん検診も受けましょう。
長年たばこを吸っている人でも、禁煙によりリスクを下げることが可能
日本では、肺がんで死亡する人の約7割は喫煙が原因となっています。そうした状況を踏まえ、国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループでは、多目的コホート研究*から得られたデータをもとに、肺がんに罹患する確率を予測するモデルを作成しました(JPHC Study「10年間で肺がんに罹患する確率について―詳細な喫煙状況などを用いた個人の肺がん罹患の予測モデル―」 )。
これは、年齢や性別、喫煙開始年齢、生涯喫煙量(PY=1日に吸うたばこの箱の数×喫煙年数)、ならびに禁煙後の経過年数から、10年間で肺がんに罹患する確率を算出し、個人の肺がんリスクを予測するものです。
それによると、性別によらず、年齢が高いほど、また生涯喫煙量が多いほど、10年間で肺がんに罹患する確率は高くなっていました。一方で、現在も喫煙しているグループと禁煙後10年以上経過しているグループを比較すると、同じ年齢や同じ生涯喫煙量であっても、禁煙したグループのほうが肺がん罹患確率は大幅に低くなっていました。
この予測モデルをもとに、国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループでは、10年間で肺がんに罹患する確率を知ることのできる「簡易スコア」を作成しています。以下の表から、ご自身に当てはまる①喫煙状況、②喫煙開始年齢、③年齢、のスコアを求めて合計し、確率を算出してみましょう。
例えば、20歳から毎日2箱吸っている男性喫煙者のケースで考えてみましょう。40年間毎日2箱吸い続けて60歳を迎えた(生涯喫煙量2×40=80PY)場合、10年間での肺がん罹患確率は8.9%となります。しかし、同じ男性でも、50歳時点で禁煙して60歳を迎えた場合(禁煙後10年以上、生涯喫煙量2×30=60PY)は1.8%となります。
*多目的コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの
生涯喫煙量 (PY) |
現在喫煙者 | 禁煙後 1~5年 |
禁煙後 6~10年 |
禁煙後 10年以上 |
---|---|---|---|---|
15以下 | 4 | 1 | -1 | -2 |
16~30 | 6 | 3 | 1 | 1 |
31~45 | 7 | 4 | 3 | 2 |
46~60 | 8 | 5 | 3 | 3 |
61~75 | 9 | 6 | 5 | 4 |
76以上 | 10 | 7 | 5 | 5 |
15~24歳 | 0 |
---|---|
25~34歳 | -1 |
35~44歳 | -2 |
45~54歳 | -3 |
55歳以上 | -4 |
40~44歳 | 45~49歳 | 50~54歳 | 55~59歳 | 60~64歳 | 65歳以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 0 | 2 | 5 | 8 | 10 | 11 |
女性 | 2 | 4 | 5 | 7 | 8 | 9 |
スコア | 10年間での確率 | スコア | 10年間での確率 | スコア | 10年間での確率 |
---|---|---|---|---|---|
≦7 | <0.5% | 12 | 1.5% | 17 | 4.6% |
8 | 0.6% | 13 | 1.8% | 18 | 5.7% |
9 | 0.7% | 14 | 2.3% | 19 | 7.1% |
10 | 0.9% | 15 | 2.9% | 20 | 8.9% |
11 | 1.2% | 16 | 3.6% | 21 | 11.1% |
(国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究グループ「10年間で肺がんに罹患する確率について―詳細な喫煙状況などを用いた個人の肺がん罹患の予測モデル―」より作成)