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日々の食事パターンの傾向が、がんリスクに影響する可能性がある

日々の食事パターンの傾向が、がんリスクに影響する可能性がある

食事パターンを「健康型」「欧米型」「伝統型」の3つに分け、がんリスクや死亡リスクを調べた研究があります。日本では、「食の欧米化」により生活習慣病が増えたとされていますが、いわゆる健康的な食生活や和食が、必ずしもすべてのがんのリスクや死亡リスクを下げるともいえません。特定の食品や栄養素に偏らず、バランスよく食べることを心がけるとよいでしょう。

総合的な食事のバランスとがんリスクとの関連

さまざまな研究により、がんの発生には食生活が影響することがわかっています。特定の食品や栄養素の過不足だけではなく、総合的な食事のバランスも重要です。国立がん研究センター社会と健康研究センター予防研究グループが行った、食事パターンとがんリスクや死亡リスクにの関連を調べた多目的コホート研究を見てみましょう。

これらの研究ではまず、対象の男女に食事に関する調査アンケートを行い、134品目の食品および飲料の摂取量を調べました。それをもとに、「健康型」「欧米型」「伝統型」の3つの食事パターンを抽出し(下表参照)、それぞれの食事パターンの中で摂取状況によって点数(スコア)化しました。

●各食事パターンに関連する主な食品
健康型 野菜、果物、いも類、大豆食品、きのこ類、海そう類、緑茶、脂の多い魚など
欧米型 肉類、加工肉、パン、果物ジュース、コーヒー、紅茶、ソフトドリンク、マヨネーズ、ソース、魚介類など
伝統型 ご飯、みそ汁、漬物、サーモン、塩魚・干物、いか・たこ・えび・貝類、果物、日本酒(男性)

*多目的コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

男性の大腸がんリスクは「健康型」で低下。前立腺がんと乳がんは「欧米型」で上昇傾向

  • 大腸がん(JPHC Study「食事パターンと大腸がんリスクとの関連について」)
    男性では、「健康型」のスコアが高いグループで、大腸がんのリスクが低く、特に部位別では遠位結腸がんのリスクの低下が認められました。一方、女性では、「欧米型」のスコアが高いグループで、結腸がん(特に遠位結腸がん)のリスクが高くなることがわかりました。
  • 乳がん(JPHC Study「食事パターンと乳がん罹患との関連」)。
    乳がんに関しては、「欧米型」のスコアがもっとも高いグループでは、もっとも低いグループと比べて乳がんのリスクが32%増加しており、閉経後の女性においても、同様の傾向が見られました。さらに、「欧米型」のスコアが高いほど、ホルモン依存性の乳がんリスクが高くなりやすいこともわかりました。
  • 前立腺がん(JPHC Study「食事パターンと前立腺がん罹患との関連」)
    「欧米型」のスコアがもっとも高いグループでは、もっとも低いグループと比べて、前立腺がん(全症例)のリスクが22%増加することがわかりました。なお、前立腺がんは、健康意識が高くPSA検査を受ける人のほうが発見されやすくなるため、自覚症状で発見された前立腺がんに限定して食事パターンとの関連を調べたところ、「健康型」のスコアがもっとも高いグループでは、もっとも低いグループよりも前立腺がん(全症例)のリスクが約30%低下していました。限局がん(がんが前立腺内にとどまっているがん)ではさらに大幅なリスクの低下が認められました。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。