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乳がんと女性ホルモン、運動、大豆製品との関連

乳がんと女性ホルモン、運動、大豆製品との関連

乳がんは、女性がかかるがんの中でもっとも多いがんであり、しかも近年急増しています。女性ホルモンにさらされている期間が長いほど、乳がんのリスクは高まります。一方、適度な運動と大豆製品の摂取によりリスクが低くなる可能性があります。リスクの高い人はとくに、運動習慣を身につけ、ふだんの食事に大豆製品を取り入れるよう心がけましょう。

女性のライフスタイルの変化が罹患率増加の一因に

乳がんの発生には、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンが深くかかわっていて、乳腺細胞がエストロゲンにさらされている期間が長いほど、乳がんの発生リスクが高くなります。

現代の日本人女性は、昔に比べて初経年齢が早くなり、閉経年齢は遅くなっています。さらに、晩婚化で初産年齢が高くなったことに加え、少子化により妊娠・出産経験が少なく、生涯一度も妊娠しない女性もふえています。こうしたことから、エストロゲンに長期間さらされている女性が増加し、乳がんの罹患率が高まっていると考えられます。

女性ホルモンの分泌量は、閉経すると大幅に減少します。ところが、脂肪組織や副腎、卵巣などにあるアロマターゼという酵素が、副腎皮質から分泌される男性ホルモン(アンドロゲン)をもとにエストロゲンを産生する働きをします。そのため、閉経後であっても、肥満しているとエストロゲンも一定量が保たれるため、乳がんのリスクを高めることになります。

また、更年期の女性では、更年期特有の諸症状を改善するために、ホルモン補充療法を行う場合があります。アメリカの国立衛生研究所(NIH)では、ホルモン補充療法と乳がんとの関連を調べる研究を行いました。閉経後5年以上にわたって女性ホルモンを投与したグループと投与しないグループを比べたところ、投与したグループで明らかに乳がんの罹患率が高まることがわかりました。一方、日本人を対象としたコホート研究では、ホルモン補充療法による乳がんのリスク増加は認められませんでしたが、使用者が少なかったという限界もあります。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。