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乳がんと女性ホルモン、運動、大豆製品との関連

乳がんと女性ホルモン、運動、大豆製品との関連

運動習慣でリスクは25%以上低下。大豆製品は食事に上手に取り入れて

一方、乳がんリスクを低下させる可能性があるのは、運動と、大豆製品あるいは大豆製品にもっぱら含まれるイソフラボンです。

乳がんと運動との関連について、国立がん研究センターが日本人を対象に行ったコホート研究では、運動習慣が「月3回以内」のグループと比べると、「週3日以上」のグループでは乳がんのリスクが0.73倍となっていました。

なぜ、運動習慣があると乳がんのリスクが低下するのか、そのメカニズムははっきりわかっていません。しかし、運動習慣は、さまざまな生活習慣病の予防にもつながります。また、閉経後の肥満は乳がんリスクを高めることになるので、運動習慣は肥満を防ぐ意味でもすすめられます。世界がん研究基金による国際的な評価でも、運動による乳がんのリスク低下について、閉経後の乳がんに対しては「可能性大」、閉経前の乳がんに対しては、活発な運動が「可能性大」となっています。

また、大豆製品摂取と乳がんとの関連を調べた、日本人やアジア人対象のコホート研究では、大豆製品に含まれるイソフラボンという成分の摂取量が多い女性ほど、閉経後に乳がんを発生するリスクが低下することが示されました。

イソフラボンは、エストロゲンとよく似た化学構造をしています。乳腺細胞にはエストロゲン受容体がありますが、イソフラボンを多く摂取すると、エストロゲンよりも先にこの受容体にイソフラボンが結合し、エストロゲンの作用を弱めるのではないかと考えられています。ただし、いくらイソフラボンが乳がんリスクを下げるといっても、とり過ぎは逆効果になる危険があります。過剰摂取を防ぐためにも、サプリメントなどに頼るのではなく、ふだんの食事の中に大豆や大豆製品を取り入れ、適量をとることが大切です。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。