サプリメントとがん予防との関連は?
サプリメントの大量摂取にメリットはない
ビタミンEについても、がんや心血管疾患の予防効果を検証するための試験が欧米で実施されてきましたが、多くの研究で、有意な予防効果は認められませんでした。それどころか、比較的高用量(1日400IU以上)のビタミンEを1年以上補給したグループでは、プラセボ(偽薬)を補給したグループと比較して、統計学的に有意に死亡率が高くなることが示されました。一方、低用量のビタミンEを用いた研究では、死亡率に差がないか、やや低下する傾向がみられました。[2]
また、β-カロテン、ビタミンA、C、E、セレニウムのいずれか、あるいはこれらを組み合わせたサプリメントの有効性を検証したデータ(68試験、合計23万人が対象)をメタアナリシス(統合解析)により評価した研究が、2007年に発表されました。これによると、ビタミンCとセレニウムについては、補給による死亡リスクの差はみられませんでした。一方、β-カロテン、ビタミンAおよびEについては、補給により4~16%死亡リスクが高まるという結果となりました。[3]
ここに紹介した以外にも、これらのサプリメントの補給にがん予防効果がないことを示す複数の研究結果が報告されています。これらを総合的にみても、その成分が明らかに欠乏状態にある一部の人を除いては、「がん予防を目的に、特定の栄養素をサプリメントで大量摂取することにメリットはない」と言えるでしょう。[4]
サプリメントは、あくまでも不足している栄養素を補うものであるという正しい認識をもち、過剰摂取にはくれぐれも気をつけましょう。
参考文献
- [1]BARON, J. A., et al. IARC Handbooks of Cancer Prevention. Carotenoids. Vol. 2. IARC, Lyon, 1998.
- [2]MILLER, Edgar R., et al. Meta-analysis: high-dosage vitamin E supplementation may increase all-cause mortality. Annals of internal medicine, 2005, 142.1: 37-46.
- [3]BJELAKOVIC, Goran, et al. Mortality in randomized trials of antioxidant supplements for primary and secondary prevention: systematic review and meta-analysis. Jama, 2007, 297.8: 842-857.
- [4]津金昌一郎.癌と臨床栄養.丸山道生編.日本医事新報社,東京,2016,p39-46.