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体格はがんリスクにどう影響する?

体格はがんリスクにどう影響する?

日本人を対象とした研究により、高身長の女性や閉経後の肥満女性は、乳がんリスクが高くなることが示されています。身長は自分で変えられるものではありませんが、体重はコントロールすることが可能です。がん予防のためにも太りすぎややせすぎに注意し、適正体重を保つことが大切です。

肥満は閉経後、高身長は閉経前後に関わらず乳がんリスクが高くなる

世界がん研究基金(WCRF)による国際的評価では、肥満は、食道腺がん、膵臓がん、肝臓がん、大腸がん、閉経後の乳がん、子宮体がん、腎臓がんのリスクを上げることは「確実」と報告されています。さらに、成人後の体重増加により閉経後の乳がんのリスクが、高身長により大腸がん、乳がん、卵巣がんのリスクが「確実」に上がると評価しています。

肥満、成人後の体重増加、そして高身長と、すべてにおいてリスクを上げることが「確実」と評価されているのが乳がんです。欧米と比較して、アジアでは乳がん患者は少ないものの、日本では増加傾向にあります。しかし、アジアの女性を対象としたこれまでの研究では、体格と乳がんとの関連はよくわかっていませんでした。

そこで、国立がん研究センター 社会と健康研究センターでは、40~69歳の女性約5万6000人を対象としたコホート研究*1 を行い、体格と乳がん罹患率との関連を調べました。本研究では、研究開始時に行ったアンケート調査結果をもとに、身長、体重、BMI[肥満指数、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)]によってグループ分けをし、その後に発生した乳がんのリスクを比較しました(国立がん研究センター 社会と健康研究センター、JPHC Study「体格と乳がん罹患の関連について」)。

その結果、BMIに関しては、閉経前の女性では乳がんリスクとの関連がみられませんでしたが、閉経後の女性では、BMIの値が大きいほど乳がんリスクが高くなることが示されました。とくに、BMIが30以上のグループではリスクの上昇幅が一気に上がり、BMIが19未満のグループと比べてリスクが2.3倍高くなっていました。

一方、身長に関しては、閉経前・閉経後ともに、身長が高い女性ほど乳がんリスクが高くなっていました。身長160cm以上のグループの乳がんリスクを身長148cm以下のグループと比べると、閉経前で1.5倍、閉経後で2.4倍高いという結果となりました。

閉経後は、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが脂肪組織中から産生され、血中のエストロゲン濃度が高くなります。そのため、BMIの値が大きい、すなわち肥満であることが、乳がんリスクを上げる一因と考えられます。また、アジアの女性において、身長が高いと乳がんリスクが高くなることが示されたのは、今回の研究が初めてです。そのメカニズムははっきりわかっていませんが、成長期の栄養状態のほか、成長ホルモンや性ホルモンなどが関与しているのではないかと考えられています。

なお、日本人を対象としたプール解析*2 では、閉経前女性でもBMIが高くなると乳がんリスクも高くなる傾向が見られています(国立がん研究センター 社会と健康研究センター 科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究「肥満指数(BMI)と乳がんリスク」)。

*1 コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

*2 プール解析…複数の研究データを、あらかじめ定めた共通のルールにのっとって解析するもの

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。