文字サイズ

アブラナ科野菜と全死亡リスク・がん死亡リスクとの関連

アブラナ科野菜と全死亡リスク・がん死亡リスクとの関連

大根やブロッコリーなど今が旬のアブラナ科野菜には、抗発がん・抗炎症作用などが期待される成分が多く含まれています。アブラナ科野菜摂取量が多い人は、男女ともに全死亡リスクが低く、男性の喫煙者ではがん死亡リスクが低下するという報告も。ほかにも体によい栄養素が豊富に含まれているので、積極的にとるとよいでしょう。

摂取量が多いと男性は14%、女性は11%全死亡リスクが低下

大根、キャベツ、ブロッコリー、小松菜、白菜、チンゲンサイなどは、いずれも「アブラナ科」に属する野菜です。これらの野菜に含まれる栄養素の中で、とくに注目すべきなのは辛み成分である「イソチオシアネート」です。これまでの動物実験などにより、イソチオシアネートには抗発がん、抗炎症、抗酸化活性の作用があることが示されていることから、アブラナ科野菜には慢性疾患を予防する働きがあるのではないか、と期待されています。

そこで、国立がん研究センター 社会と健康研究センターでは、45~74歳の日本人約9万人を対象としたコホート研究において、アブラナ科野菜摂取と全死亡および疾患別死亡との関連を調べました(JPHC Study「アブラナ科野菜と全死亡および疾患別死亡との関連について」)。まず、食事に関するアンケート調査から、アブラナ科野菜(キャベツ、大根、小松菜、ブロッコリー、白菜、チンゲンサイ、からし菜、フダンソウ、たくあん、野沢菜漬け、白菜漬け)の摂取量を推定し、摂取量により男女それぞれ5つのグループに分類しました。その後、アブラナ科野菜摂取量がもっとも少ないグループを基準に、全死亡および疾患別死亡のリスクを比較しました。

その結果、全死亡リスクは、アブラナ科野菜摂取量がもっとも少ないグループと比較して、もっとも多いグループで、男性は14%、女性は11%低いことが示されました。また、疾患別死亡リスクでは、男性ではアブラナ科野菜摂取量がもっとも多いグループで、がん死亡リスクが16%低くなっていました。一方、女性では、アブラナ科野菜摂取量がもっとも多いグループで、心疾患死亡リスクが27%、外因による死亡リスクが40%低くなっていました。

摂取したアブラナ科野菜の種類別に全死亡リスクとの関連をみてみると、男性ではブロッコリー、たくあん摂取量がもっとも多いグループで、女性では大根、ブロッコリー摂取量がもっとも多いグループでリスクの減少がみられました。

さらに、喫煙状況別で関連を調べたところ、男性では喫煙状況に関係なく、アブラナ科野菜摂取量が多いグループで全死亡リスクが低下する傾向がみられました。また、過去および現在喫煙している男性において、アブラナ科野菜摂取量がもっとも多いグループで、がん死亡リスクが統計学的有意に低下していました。一方、非喫煙者では同様の関連はみられませんでした。

* コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。