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「次世代多目的コホート研究」とは

「次世代多目的コホート研究」とは

本連載でもいくつも紹介してきた「多目的コホート研究」ですが、2011年、20年ぶりに新たな研究「次世代多目的コホート研究」が立ち上げられました。本研究の趣旨や目的をご紹介します。

従来の多目的コホート研究は1990年にスタート

国立がん研究センター予防研究グループの「多目的コホート研究」は、がんをはじめとする生活習慣病の予防法を進展させるために、1990年に開始された追跡調査です。10都道府県11保健所管内の40~69歳の地域住民14万人を対象に、生活習慣などに関するアンケート調査と血液試料の収集を行い、それらをもとにデータを分析しています。また、調査開始時だけでなく、5年ごとに繰り返し調査を行うとともに、がん、循環器疾患(脳卒中・心筋梗塞)、糖尿病などの病気の罹患についても長期的に追跡調査し、それらの関連性を調べるというものです。

がん、循環器疾患、糖尿病といった病気の発生には、生活習慣が密接に関係していることが明らかになっています。その反面、生活習慣が似通っていたとしても、病気のかかりやすさには個人差があり、そこには生まれながらの体質(遺伝因子)も影響していると考えられています。

つまり、より確実性の高い生活習慣病予防法を確立するためには、生活習慣や生活環境と遺伝因子の両方に着目し、それらの要因と病気との関連性を解明する必要があります。また、日本人にとって有益な予防法を見出すためには、実際に日本に暮らす人々の集団を長期的に観察し、科学的に精査する以外に方法はありません。そうした考えをもとに実施されたのが、多目的コホート研究なのです。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。