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「次世代多目的コホート研究」とは

「次世代多目的コホート研究」とは

次世代につながる、より確かな健康づくりを目指して

多目的コホート研究で約30年にわたり追跡調査を行ってきたことで、どのような生活習慣を続ければ、がんや循環器疾患を予防できるかがある程度わかってきました。しかし、これまでの研究ではまだ解決できていないことも数多く残っています。また、多目的コホート研究の対象者は、一番若い人でも戦後間もなくして生まれた人となっています。戦後の日本人の食習慣や生活習慣は大きく変化しているため、現在の日本人の状況を反映できていない可能性があります。さらに、近年は研究や技術の進歩も目覚ましく、血液などから生活習慣病に役立つさまざまな情報が得られる可能性も出てきました。そこで、次の世代の人々にもつながるような、予防のための研究を受け継いでいくために立ち上げられたのが、次世代多目的コホート研究です。

次世代多目的コホート研究は2011年から、7県の40~74歳の地域住民26万人を対象に開始されました。このうち、11万5000人から研究参加への同意と生活習慣に関するアンケート調査への回答が得られ、5万5000人から血液試料と尿試料の提供を受けています。

次世代多目的コホート研究では、対象者から得られた生活習慣・生活環境に関するアンケート情報、健(検)診情報、遺伝子解析結果、追跡情報などを活用した医学的研究を行い、国民の健康の維持・増進、がんやその他の生活習慣病の予防や治療などに役立てることを目的としています。また、本研究で集められたアンケート情報や健(検)診情報、追跡情報は、集計データとして対象地域の健康づくり対策にも活用されます。

20年ぶりに立ち上げられたこの新たな研究が、次世代を含むより多くの方々の健康づくりに役立つことを心より願っています。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。