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がんリスクが低下する「5つの健康習慣」とは?

がんリスクが低下する「5つの健康習慣」とは?

ポイントを押さえて、1つでも多くの健康習慣を身につけよう

ここからは、5つの健康習慣の具体的な実践のしかたについて紹介します。

①禁煙
日本人を対象とした5つのコホート研究のメタアナリシスによると、非喫煙者に対する喫煙者のがん全体のリスクは1.5倍と推計されています。たばこは肺がんだけでなく、食道がんや膵臓がん、胃がん、膀胱がんなど多くのがんのリスクを高めます。また、周囲の人の肺がんリスクも高めます。
現在習慣的に喫煙している人の割合は男性29.0%、女性8.1%で、特に30~60歳代の男性では3割を超えています。喫煙者はすぐにでも禁煙し、非喫煙者は受動喫煙に十分注意しましょう。

②節酒
多目的コホート研究では、1日あたりの飲酒量が日本酒換算で1合未満の人に比べて、2合以上飲む人では1.43倍、3合以上飲む人では1.61倍もがん発生リスクが高くなることが示されました。多量飲酒は食道がん、大腸がん、肝臓がんのリスクを上げるほか、女性では乳がんのリスクが高くなることも示されています。
お酒を飲む場合は適量(男性で1日あたり日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、ワインならボトル1/3程度。女性はこの1/2~2/3程度)を守り、飲めない人は無理に飲まないようにしましょう。

③食生活の見直し
食事でポイントとなるのは、「減塩」「野菜と果物をとる」「熱い飲み物・食べ物は冷ましてからとる」という3つです。
塩分のとりすぎは、胃がんのリスクを高めることがわかっています。1日あたりの食塩摂取量の目標値は男性7.5g未満、女性6.5g未満ですが、日本人の実際の平均値は男性11.0g、女性9.3gと高くなっています。日頃から減塩を心がけ、胃がん予防のためには、特に塩分の高い塩蔵品(梅干し、干物、塩鮭、たらこ、いくらなど)は食べる頻度を週1回未満に抑えましょう。
野菜や果物をとることで、食道がんや胃がん、肺がん(果物)のリスクを低くできる可能性があるといわれています。日本人の野菜摂取量の平均値は男性290.9g、女性273.3gで、特に20~40歳代の女性の摂取量が低くなっています。野菜350g、果物100gを目指して意識的にとりましょう。
また、熱すぎる飲み物や食べ物は食道がんのリスクを高めるとされているため、少し冷ましてからとることを心がけましょう。

④活発な身体活動
多目的コホート研究では、身体活動量が多いと、がん全体の発生リスクの低下につながり、部位別では、男性では結腸がん、肝がん、膵がん、女性では胃がんのリスクの低下につながることが示されました。
厚生労働省では、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分行い、それに加えて、息がはずみ汗をかく程度の運動を1週間に60分程度行うことを推奨しています。デスクワーク中心の人や運動習慣のない人は、通勤や買い物などの時間を利用して歩数を増やすなど、意識的に体を動かしましょう。

⑤適正体重の維持
肥満は、閉経後の女性の乳がん、大腸がん、子宮体がんなどのリスクを上げます。一方で、やせすぎもがんのリスクを高めることがわかっているため、がん予防のために、中高年期においては、男性はBMI21~27、女性は21~25の範囲になるように体重を管理することがすすめられます。
日本人の肥満者(BMI25以上)の割合は、男性32.2%、女性21.9%となっています。一方、やせの人(BMI18.5未満)の割合を年代別にみると、20歳代の女性では19.8%を占めています。バランスのよい食事と適度な運動習慣により、適正体重を維持するようにしましょう。

*厚生労働省「平成30年国民健康・栄養調査」による。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。