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日本人のがんの状況は、他国のがんとどう違う?

日本人のがんの状況は、他国のがんとどう違う?

日本人は欧米人よりも肥満の人が少ない、和食中心のバラエティ豊かな食事が多い(しかし塩分摂取量が多い)などの特徴があり、発生しやすいがんや科学的に効果のあるがん予防法が異なります。日本人にはどのような傾向がみられるのかを正しく理解し、生活習慣を見直してがんの予防に努めましょう。

日本やアジアではやせすぎにも要注意

がんの発生には、生活習慣が大きく影響することがわかっています。がんの罹患率を部位別にみてみると、国によって多いがんの種類が異なりますが、これは生活習慣の違いが深く関わっていると考えられます。

日本人にはどの部位のがんが多く、さらにそれらがどのような要因によって、どれくらい発生しているのか、といった現状を把握するために、国立がん研究センターでは、日本人のデータを用いた調査を行いました(国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ「日本におけるがんの原因」)。

この研究では、がんリスクを上げることが明らかになっている要因のなかから、喫煙(能動)、受動喫煙、飲酒、過体重・肥満、運動不足、野菜不足、果物不足、塩分のとりすぎ、感染(ピロリ菌、C型肝炎ウイルスなど)を取り上げました。そして、これらのリスクがもしなかった(またはそれに準じる状態であった)としたら、がんの発生(またはがんによる死亡)が何%減少することになったかを要因別に推計しました。

これによると、減少率が最も高かったのは、男性では喫煙、女性では感染となりました。言い換えれば、日本においては、これらの要因への対策が最も優先されるということになります。

また、この研究結果では、男女ともに過体重・肥満による影響は小さいことが示されました。これは、日本人では、国際基準の肥満(BMI30以上)の割合が男女ともに3~5%前後と少ないためと考えられます(米国では30~40%)。体重に関しては、太りすぎだけでなく、やせすぎもがんリスクを上げることがわかっています。特に、日本やアジアの集団を対象とした多くの研究では、低BMIとがんリスクの関連が報告されているので、日本人はやせすぎにも注意が必要です。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。