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がん検診にはデメリットもあると理解し、正しい知識のもとに選択を

がん検診にはデメリットもあると理解し、正しい知識のもとに選択を

がんは早期発見が重要であり、そのために有効なのががん検診です。ただし、がん検診にはデメリットがあるのも事実です。がん検診を有効に活用するためには、正しい知識のもとに選択することが大切です。それと同時に、がんの最大の予防法は生活習慣の改善であることもしっかりと心得ておきましょう。

「偽陽性」「過剰診断」などのデメリットを理解しよう

定期的にがん検診を受けることは、がんの早期発見に役立ちます。初期のうちに治療を開始できれば、体への負担が少なく、完治できる可能性も高くなります。また、がん検診により「異常なし」と判定されれば、大きな安心感も得ることができます。

がん検診には、こうしたメリットがある一方で、実はデメリットもあります。がん検診のおもなデメリットとして、次の4つがあげられます。

1つめは、がん検診で行う検査の精度は100%ではないということです。どんなに高精度の検査であっても、がんの種類や大きさ、形、発生した場所などにより、見逃してしまう場合があります。このように、本当は陽性なのに陰性と判定されてしまうことを「偽陰性」といいます。検診結果が陰性だったからと安心してしまい、気づかないうちにがんが進行してしまう危険があります。

2つめは、結果的に不必要な検査や治療を招く可能性があることです。がん検診により「がんの疑い」と判定されても、精密検査をした結果、がんが見つからなかったということも少なくありません。これを「偽陽性」といいますが、偽陽性だった場合、結果的に不必要な精密検査を受けたことになります。また、検診で見つかるがんの中には、微小で寿命に影響しないがんや、進行がんになる可能性の低いがんもあります。しかし、今のところこのようながんと通常のがんを区別することはできないため、結果として過度な治療を行うことになります。このような場合を「過剰診断」といいます。

3つめは、検診にともない偶発症を招くことです。偶発症とは、検診時に受ける検査で事故等を招くことをいいます。たとえば、胃の内視鏡検査では出血や穿孔(せんこう:胃壁に穴が開くこと)が起こる可能性があり、ごく稀ではあるものの、死に至ることもあります。また、X線検査やCT検査では、放射線被ばくによるがんの誘発、遺伝的影響の可能性もあります。これらが起こる確率は極めて低いですが、絶対にないとは言い切れません。

そして4つめは、検診による心理的ストレスです。がん検診で「がんの疑いあり」となった場合、精密検査を受けることになりますが、個人差はあるものの、精密検査の結果が出るまでは不安がつきまとい、心理的に大きな負担を抱えることになります。

以上のように、がん検診にはデメリットもあるということを正しく理解することが大切です。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。