文字サイズ

感染症によって起こるがんは、日本人のがんの何割?

感染症によって起こるがんは、日本人のがんの何割?

日本人に多い肝がんや胃がんの多くはB型・C型肝炎ウイルス、ピロリ菌への感染がきっかけとなって起こります。また、子宮頸がんの原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染であることがわかっています。感染の有無を調べ、感染症によるがんを予防しましょう。

がん全体の約20%は感染症が原因

日本人を対象に感染症によって起こるがんをみてみると、肝がん、胃がん、子宮頸がんなどが挙げられます。そして、日本人がかかるがん全体の約20%が感染に起因するものと推計されています。

肝がんの原因となるのが、B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスへの感染です。肝がんというとアルコールの多量摂取が主な原因と思われがちですが、実は肝がんになる人の8割以上は、B型・C型肝炎ウイルスへの感染が原因となっています。また、B型・C型肝炎ウイルスに感染している人は、感染していない人と比べて、肝がんになるリスクが十数倍から数十倍になるという報告もあります。一方で、感染していなければ、肝がんになることはまれとも言えます。

近年、肝炎ウイルス感染者は減少し、肝がんの罹患率・死亡率も減少傾向となっています。また、現在、B型肝炎ウイルスについては、ワクチン接種により予防が可能となりました。一方、C型肝炎ウイルスについては、ワクチンはありませんが、有効な治療薬が開発され、肝炎から肝がんへと移行するのを防ぐ効果が期待できるようになりました。

細菌・ウイルスへの持続感染により、がんリスクが高まる

胃がんのリスクとして広く知られているのがピロリ菌です。ピロリ菌に感染している人、もしくは感染歴のある人は、まったく感染したことのない人に比べて、胃がんを発生するリスクが約10倍になることがわかっています。ピロリ菌は不衛生な水の中に存在すると考えられているため、上下水道が完備されていない生活環境で育った中高年層では感染率が高く、60歳以上の多く(60~90%程度)がピロリ菌に感染したことがあると推定されています。すなわち、感染していても、多く肺がんにならないとも言えます。

ピロリ菌は胃の表層粘膜下にすみつくため、胃酸の影響を受けずに増殖します。そして、毒素を発生させて胃に慢性的な炎症を引き起こし、その状態が長期間にわたって持続すると、胃がんを引き起こしやすい状態を作り出します。

一方、子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染により発生します。HPVは主に性交渉で感染し、国内調査によれば10~20代の女性の約3割に感染が認められたとの報告もあります。このように、感染自体はめずらしいものではなく、多くの場合、感染しても免疫力で排除されます。しかし、その一方で、その後も感染を繰り返し、長期間持続的に感染すると細胞が傷つけられ、子宮頸がんに進行するリスクが高まります。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。