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胃がんのほぼ確実なリスクになる塩分。日本人が減らすべき量はどれくらい?

胃がんのほぼ確実なリスクになる塩分。日本人が減らすべき量はどれくらい?

食塩や塩蔵食品のとりすぎは、日本人の胃がんのほぼ確実なリスクとされています。1日当たりの食塩摂取量は、男女ともに目標値を大幅に上回っているため、調味料の使い方、メニューの選び方、調理法などを工夫して、減塩に努めることが大切です。

和食はヘルシーだが、塩分が多いことが唯一の弱点

昔から、日本人は胃がんの罹患率が高く、年々減少傾向にはあるものの、今でも毎年13万人ほどが罹患していると推計されています。日本人に胃がんが多い要因のひとつとして、日本の伝統食である和食との関係が指摘されています。和食は、魚介類や肉類、野菜類、大豆製品などをバランスよくとることができる健康食として知られていますが、唯一の弱点ともいえるのが、塩分量の多さです。

日本人を対象としたコホート研究では、食塩の摂取量が増えるほど胃がんのリスクが高くなることが男性で示され、特に、いくら、塩辛、練りうになどの塩蔵食品の摂取頻度については、男女共通して明らかな関連が示されました。こうしたことから、「日本人のためのがん予防法」では、食塩・塩蔵食品の過剰摂取が胃がんリスクを高めることは「ほぼ確実」と評価しています。

和食では定番のみそ汁や漬物、さらに干物や塩蔵食品には多くの塩分が含まれています。そのため、日常的に和食を食べていると、知らず知らずのうちに塩分をとりすぎてしまうというわけです。

ではなぜ、塩分をとりすぎると胃がんのリスクが高くなるのでしょうか。胃の中の塩分濃度が高くなると、胃粘膜を保護している粘液層の性状が変わって防御力が低下し、胃酸によるダメージを受けて炎症をおこします。炎症をおこした胃粘膜の細胞は、発がん性物質の影響を受けやすくなります。また、このような状態が胃がんの原因となるピロリ菌の持続感染を促し、胃がんリスクを高めると考えられています。

*コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

減塩は男女共通の課題

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、成人の食塩摂取量の1日当たりの目標値を示しており、以前(2015年版)は、男性8.0g未満、女性7.0g未満でした。しかし、実際に日本人が摂取している1日当たりの量を平均値でみてみると、男性11.0g、女性9.3gと目標値を大幅に上回っています(平成30年「国民健康・栄養調査」)。

減塩の重要性から、最新の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、目標値が男性7.5g未満、女性6.5g未満に引き下げられました。また、高血圧、および慢性腎臓病の重症化を予防するためには、男女とも6.0g未満を目標とするよう定められています。ちなみに、WHO(世界保健機関)のガイドラインはさらに厳しく、1日5g未満を目標とすることを強く推奨しています。

津金 昌一郎

監修者 津金 昌一郎 先生 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
1981年慶應義塾大学医学部卒、85年同大学大学院修了。86年より国立がんセンター研究所入所。臨床疫学研究部長などを経て、2003年に同センターがん予防・検診研究センター予防研究部長に就任。その間に米国ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を務める。2010年に国立がんセンターの独立行政法人への移行に伴い、国立がん研究センター予防研究部長に就任。2013年から現職。1990年にスタートした国立がん研究センターがん研究開発費による研究班(2009年度までは、厚生労働省がん研究助成金による研究班)による大規模疫学研究である多目的コホート研究の主任研究者を務める。2010年朝日がん大賞、2014年高松宮妃癌研究基金学術賞などを受賞。一般向けの主な書著に『科学的根拠にもとづく最新がん予防法』『がんになる人ならない人』『ボリビアにおける日本人移住者の環境と健康』『なぜ、「がん」になるのか?その予防法教えます。』『食べものとがん~がんを遠ざける食生活~』などがある。昭和大学、山形大学客員教授、日本疫学会理事、日本癌学会評議員などを兼務。