健康に自信があっても、がん検診は必要?
どんなに生活習慣の改善や感染予防に努めても、がんを完全に防ぐことはできず、誰でもがんになる可能性はあります。そのため、「症状のない健康な人」を対象に行うのががん検診です。科学的根拠に基づいた有効ながん検診を定期的に受け、要精密検査・要再検査の場合は必ず指示に従うことが大切です。
がんによる死亡を回避することが検診の最大の目的
「日ごろから健康的な生活習慣を心掛けているし、健康には自信があるから、がん検診は受けなくてもよいのでは……?」と考える人がいるかもしれません。確かに、バランスのよい食事をとり、適度な運動を習慣にし、禁煙する、といった生活習慣は、がんを予防するうえで非常に有効です。しかし、残念ながら、そのような健康的な生活習慣を実践したり、感染予防に努めたりしていても、がんを完全に防ぐことはできません。つまり、誰でもがんになる可能性はあるのです。
がんの多くは、初期の段階では自覚症状はほとんど現れません。そうした無症状のうちに、「がんかもしれない」ことを早期に見つけ出すことのできる唯一の方法が、がん検診です。そして、がんが発見された際には適切な治療を行うことにより、がんによる死亡を回避する、これこそががん検診の最大の目的なのです。
国立がん研究センターで、約4万人の男女を対象に行った多目的コホート研究*では「胃がん検診受診と胃がん死亡率との関係」および「大腸がん検診受診と大腸がん死亡率の関係」について調査を行いました。
その結果、胃がんについては、過去1年間に検診を受診していない人に比べて、検診を受診した人では胃がんによる死亡率が約48%低下していました。一方、大腸がんについては、過去1年間に検診を受診していない人に比べて、検診を受診した人では大腸がんによる死亡率が約70%低下していました。また、大腸がんを発見した時点での進行度でみてみると、検診を受診した人では大腸がんが早期で発見される可能性が約3割高く、逆に進行してから発見される危険性は約6割減少していました。この調査結果からも、胃がん検診、大腸がん検診の有効性がうかがえます。
*多目的コホート研究…数万人以上の特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの