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酒は百薬の長は古い? 飲むならほどほどに……

酒は百薬の長は古い? 飲むならほどほどに……

古くから「酒は百薬の長」ともいわれますが、それはお酒を飲める体質の人が適切な量や飲み方を守った場合のことです。飲酒は、口腔がんや咽頭がん、肝臓がんをはじめ、さまざまながんの原因になるとされています。適量を守り、週1~2日は休肝日を作ることが大切です。

男性のがん発生率は、2合以上で1.4倍、3合以上で1.6倍に

夕食とともに、あるいは休日に、お酒を飲むことを楽しみにしている人は少なくないことでしょう。コロナ禍を機にオンラインでの飲み会が普及したことからもわかるとおり、お酒は単なる嗜好品にとどまらず、コミュニケーションツールの1つにもなるものです。さて、そんなお酒ですが、がん予防の観点からみた場合、どのようにとらえたらよいのでしょうか。

国立がん研究センターでは、40~59歳の男女約73,000人を対象とした大規模コホート研究*1において、飲酒とがん全体の発生率との関連を調べる追跡調査を行いました。本研究では、アルコール摂取量を日本酒に換算し、調査開始時の飲酒の程度により、「飲まない」「時々飲む」「1日1合未満」「1日1~2合」「1日2~3合」「1日3合以上」の6つのグループに分け、その後のがん全体の発生率を比較しました。

「時々飲む」グループを1として比較してみると、男性では、1日2合未満のグループでは、がん全体の発生率はとくに高くはなりませんでした。一方、「1日2~3合」のグループではがん全体の発生率が1.4倍、「1日3合以上」のグループでは1.6倍となることが示されました。ちなみに、女性に関しては、習慣的に飲酒する人の割合が多くないためか、飲酒とがん発生率とのはっきりとした関連はみられませんでした。

また、本研究の結果を、喫煙者と非喫煙者に分けて比較したところ、非喫煙者では飲酒量が増えてもがんの発生率は高くなりませんでした。ところが、喫煙者では飲酒量が増えれば増えるほどがんの発生率が高くなり、「時々飲む」グループと比較すると、「1日2~3合」のグループでは1.9倍、「1日3合以上」のグループでは2.3倍、がん全体の発生率が高くなりました。つまり、飲酒に喫煙習慣が重なることにより、がん全体の発生率はさらに高くなることが示されました。

日本人を対象とする6つのコホート研究を統合したプール解析*2においても、一定量を超える飲酒習慣のある男性では、がんリスクが確実に高くなる、ということが示されました。

*1コホート研究…特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

*2プール解析:複数の研究集団のデータを合わせる(プールする)ことで、非常に大きなデータを作り、解析を行う研究手法

井上 真奈美

監修者 井上 真奈美 先生 1990年筑波大学医学専門学群卒。1995年博士(医学)取得。1996年ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程修了。愛知県がんセンター研究員、国立がんセンター室長、東京大学特任教授等を経て、現在、国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部部長。専門分野はがんの疫学と予防。