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酒は百薬の長は古い? 飲むならほどほどに……

酒は百薬の長は古い? 飲むならほどほどに……

「適量を守る」ことがリスク低減のカギ

世界保健機関(WHO)の傘下にある国際がん研究機関(IARC)の評価(2009年)では、飲酒は、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肝臓がん、大腸がん、乳がんの原因となる、としています。

アルコールは、体内酵素の作用によりアセトアルデヒドという物質に分解されますが、この酵素の働きには個人差があり、生まれつき強い人と弱い人がいます。酵素の働きが弱い人はアセトアルデヒドの分解が遅いため、飲酒した際に顔が赤くなりやすく、二日酔いをおこしやすい体質です。そのような人が習慣的あるいは大量に飲酒をすると、とくに口腔がん、咽頭がん、食道がんを発生するリスクが高くなることがわかっています。

日本の研究では、大腸がんに関しては、1日あたりの平均アルコール摂取量が増えるほど大腸がんが発生するリスクが高くなり、日本酒換算で4合以上飲む習慣のある人ではリスクが3倍近くになることが示されました。また、肝臓がんについては、男性では4合以上で1.7倍、女性では1合以上で3.6倍、肝臓がんになるリスクが高くなることがわかりました。

なお、乳がんに関しては、日本で行われた8つのコホート研究のプール解析により、飲酒が閉経前にかかる乳がんのリスクを高めることが明らかになっています。一方、閉経後の乳がんについては、飲酒との明らかな関連は認められていません。

このように、一定量以上の飲酒はがん発生リスクを高めるとされる一方で、節度のある飲酒であれば、全死亡や心疾患による死亡のリスクが低下することもわかっています。要するに、飲酒は「適量」を守ることが大切だということです。

お酒は種類によってアルコール度数が異なるため、適量の目安は純エタノール量を基準に求める必要があります。厚生労働省が推進している「健康日本21」では、「節度ある飲酒」の目安は20gまでとしていますが、女性は一般的に男性よりも代謝能力が低いため、この半分程度にしましょう。下の表を参考に、自分がよく飲むお酒の純エタノール量を知り、適量を守るようにしましょう。そして、週1~2日は休肝日を作ることも大切です。

なお、先ほども述べたとおり、お酒の強い・弱いには個人差があるので、飲めない人に無理に勧めたりすることはやめましょう。

(図表)酒類の純エタノール量10gに相当する量(男性。女性はこの半分が目安)
酒の種類(基準%) 酒の量 おおよその目安
ビール・発泡酒(5%) 250mL 中ビン・ロング缶の半分
酎ハイ(7%) 180mL コップ1杯または350mL缶の半分
焼酎(25%) 50mL コップ1/3杯
日本酒(15%) 80mL 0.5合
ウイスキー・ジンなど(40%) 30mL シングル1杯
ワイン(12%) 100mL ワイングラス1杯弱

井上 真奈美

監修者 井上 真奈美 先生 1990年筑波大学医学専門学群卒。1995年博士(医学)取得。1996年ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程修了。愛知県がんセンター研究員、国立がんセンター室長、東京大学特任教授等を経て、現在、国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部部長。専門分野はがんの疫学と予防。