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長期ストレスでがんリスク上昇。ストレスをためない心がけを

長期ストレスでがんリスク上昇。ストレスをためない心がけを

ストレスはさまざまな病気のリスク要因と考えられており、長期間にわたる自覚的ストレスが、がんになるリスクを高めることが国立がん研究センターの研究結果からもわかっています。日ごろからこまめにストレスを解消し、良質な睡眠をとるなど、がんになりにくい生活習慣を心がけましょう。

慢性的にストレスレベルが高いとがんリスクが11%上昇

これまでにも、ストレスがさまざまな病気のリスク要因となることを示唆する研究報告はありましたが、そのメカニズムははっきりとわかっていません。また、ストレスとがんとの関連についての研究もあまり進んでいませんでした。その理由として、ストレスは人によって感じ方が違うため、その程度を客観的に測定することが困難であることが挙げられます。また、一時的なストレスよりも慢性的なストレスのほうが病気のリスク要因となることが示唆されていますが、慢性的なストレスの影響を考慮した研究はあまり行われてきませんでした。

そうした実情を踏まえ、国立がん研究センターでは、大規模コホート研究において40~69歳の男女約10万人を対象に、自覚的ストレスとがん罹患との関連を調べる追跡調査を行いました。

調査は、「日常、あなたのストレスは多いと思われますか?」という質問に答えるアンケート方式で行い、調査開始時のアンケートの回答から、ストレスの程度によって3つのグループ(低い、中程度、高い)に分けました。さらに、5年後に同様のアンケートを行い、ストレスレベルの変化の組み合わせによって6つのグループ(常に低、常に低・中、常に中、高が低・中に変化、低・中が高に変化、常に高)に分け、その後のがん罹患リスクとの関連を調べました。その結果、2回ともストレスレベルが「高い」と回答したグループは、2回とも「低い」と回答したグループに比べて、がん罹患リスクが11%上昇していました。

同様の比較を男女別でみると、上昇の度合いは男性が19%、女性が7%となっており、男性でより強い関連がみられました。その理由の1つとして、2回ともストレスレベルが「高い」と回答した人の多くは男性であったことがあげられます。また、ストレスレベルが常に高い男性は、喫煙や飲酒、食べ過ぎによる肥満など、がんのリスク要因となる生活習慣をもつ傾向が強いことがわかり、このこともがんリスクの上昇につながっている可能性があります。また、臓器別でみると、ストレスレベルが高い人ではとくに肝がん、前立腺がんのリスク上昇がみられました。

*コホート研究…特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

井上 真奈美

監修者 井上 真奈美 先生 1990年筑波大学医学専門学群卒。1995年博士(医学)取得。1996年ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程修了。愛知県がんセンター研究員、国立がんセンター室長、東京大学特任教授等を経て、現在、国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部部長。専門分野はがんの疫学と予防。