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熱い食べ物や飲み物は、少し冷ますことが食道がん予防につながる

熱い食べ物や飲み物は、少し冷ますことが食道がん予防につながる

熱い食べ物や飲み物は、ほぼ確実に食道がんの発生リスクを高めます。これは、熱い飲食物により食道の粘膜細胞が傷つけられるためと考えられます。熱いものを熱々のまま口にすることは避け、ある程度冷ましてから口に運ぶ習慣をつけることが大切です。

細胞が修復・再生する過程で突然変異を起こし、がんが発生

科学的根拠に基づいた「日本人のためのがん予防法」(国立がん研究センター)では、熱い食べ物や飲み物が食道がんの発生リスクを高めることは「ほぼ確実」と評価しています。また、国際がん研究機関(IARC)も、非常に熱い飲み物は「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と2016年に評価しています。

食道は、のどから胃の入り口までを結ぶ臓器で、口から入ってきた飲食物は食道の内壁に直接触れることになります。食道の内壁は粘膜で覆われていますが、熱い飲食物が高温のまま入ってくると、粘膜はやけどを起こしているのと同じ状態となります。

やけど、つまり炎症が起こると、食道の細胞の遺伝子が傷つけられるため、細胞は修復・再生をしようとします。この修復・再生の過程で細胞が突然変異を起こし、がんが発生すると考えられています。通常は、がん細胞ができても免疫の働きで排除されますが、細胞の再生回数が増えたり、リスクの高い生活習慣が重なったりすると、がん化が起こりやすくなります。

実際に、ブラジル南部やウルグアイでは、かなり高温のマテ茶を金属製のストローを使って飲む習慣がありますが、これらの地域では咽頭がんや食道がんの患者が多いことがわかっています。また、日本でもかつて、和歌山県と奈良県で食道がんの患者が多いのには、熱い茶粥を食べる習慣が関係しているのではないかと考えられていました。

井上 真奈美

監修者 井上 真奈美 先生 1990年筑波大学医学専門学群卒。1995年博士(医学)取得。1996年ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程修了。愛知県がんセンター研究員、国立がんセンター室長、東京大学特任教授等を経て、現在、国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部部長。専門分野はがんの疫学と予防。