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人と人とのつながりが、がん発生や死亡リスクに影響する?

人と人とのつながりが、がん発生や死亡リスクに影響する?

コロナ禍で人との交流が減ってしまった、という人も多いことでしょう。日本人を対象としたがんに関する研究で、社会的な支え(心身の支えとなる人の存在)が少ない男性は、大腸がんの発生や死亡リスクが高くなることが示されました。心身の健康を維持するためにも、今こそコミュニケーションの大切さを見直しましょう。

社会的な支えの少ない男性は、大腸がん発生は1.5倍、死亡は3.1倍に

ここでいう「社会的な支え」とは、心身の支えとなり、安心させてくれる周囲の家族や友人、同僚などの存在のことです。こうした社会的な支えとがんとの関連を調べる研究は欧米で先行して行われており、社会的な支えの少ない人では、多い人に比べて、乳がんの発生や乳がんによる死亡のリスクが高いことが報告されています。

日本人においても同様の関連性がみられるのかどうかを調べるため、国立がん研究センターでは日本人を対象とした大規模コホート研究に基づき、「社会的な支えと、がん発生・死亡との関連」を調査分析しました。この研究は40~69歳の男女約4万4,000人を対象に行われ、まず研究開始時に以下のようなアンケートを行いました。

①心が落ち着き安心できる人の有無(なし:0点、あり:1点)
②週1回以上話す友人の人数(なし:0点、1~3人:1点、4人以上:2点)
③行動や考えに賛成して支持してくれる人の有無(なし:0点、あり:1点)
④秘密を打ち明けることのできる人の有無(なし:0点、あり:1点)

そして、各回答の合計点数により次のように4つのグループに分け、その後のがんの発生やがんによる死亡を比較しました。

5点以上:社会的な支えが「とても多い」(全体の29%)
4点:社会的な支えが「多い」(同42%)
2~3点:社会的な支えが「ふつう」(同19%)
1点以下:社会的な支えが「少ない」(同10%)

平均で約12年の追跡期間中に、3,444人ががんにかかりました。前述したグループ間で比較分析したところ、男女ともに、がん全体の発生または死亡のリスクにおいては、社会的な支えの多さとの関連はみられませんでした。

一方、臓器別にみてみると、男性では社会的な支えの「とても多い」グループと比べると、「少ない」グループの大腸がんの発生は1.5倍、大腸がんによる死亡は3.1倍高くなることが示されました。さらに年齢層別にみてみると、59歳より若い男性で、社会的な支えが少ないほうが大腸がんの発生・死亡ともにリスクが高くなる、という傾向がより強くみられました。

*コホート研究…特定集団を対象に、まず生活習慣などの調査を行い、その後何年も継続的な追跡調査を行うもの

井上 真奈美

監修者 井上 真奈美 先生 1990年筑波大学医学専門学群卒。1995年博士(医学)取得。1996年ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程修了。愛知県がんセンター研究員、国立がんセンター室長、東京大学特任教授等を経て、現在、国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部部長。専門分野はがんの疫学と予防。