膿のような鼻水の原因が歯にあることも
う蝕(虫歯)や歯周病を治療せずに放置していると、細菌が上顎洞(上の奥歯の上部に広がる空洞)に入り込んで「歯性上顎洞炎」が起こることがあります。膿のような鼻水が出るなど副鼻腔炎と同様の症状が現れ、耳鼻咽喉科だけでなく、歯科での治療も必要となります。
う蝕(虫歯)や歯周病を放置して上顎洞にまで炎症が及ぶ
顔の骨には、鼻の穴=鼻腔(びくう)の周囲に「副鼻腔」という空洞があります。額のあたりに広がる「前頭洞(ぜんとうどう)」、鼻腔の後上部にある「蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)」、目と目の間にある「篩骨洞(しこつどう)」、頬の裏側にある「上顎洞(じょうがくどう)」に分けられ、それぞれ左右に一つずつあり、鼻腔とつながっています(図1)。
かぜをひいたときなどに鼻の粘膜が炎症を起こし、それが副鼻腔にまで広がると、鼻がつまったり、黄色い膿のような鼻水が出るようになります。これを「副鼻腔炎」といい、慢性化したものは、いわゆる「蓄膿症」と呼ばれている病気です。
副鼻腔炎の一種に、歯が原因で起こる「歯性上顎洞炎」があります。上顎洞は特に、上の奥歯の根尖と隣り合っているので、う蝕(虫歯)や歯周病を治療せずに放置すると、細菌が上顎洞にまで入り込んで炎症を起こすことがあるのです(図1、2)。また、歯の根の治療(根管治療)が不十分な場合や、インプラント治療が原因で起こることもあります。また、上顎の歯をなくすと年齢につれて、上顎洞と顎の骨が接近してきます(図3)。
原因となる細菌は、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌、大腸菌など。とくに上の歯の中央から数えて6番目にある第一大臼歯(きゅうし)が原因で起こることが多く、第二小臼歯(中央から数えて5番目)、第二大臼歯(同7番目)も比較的多く見られます。


原因となっている歯の治療が不可欠
歯性上顎洞炎は通常、う蝕(虫歯)や歯周病などがあるほうの上顎洞に起こります。急性の場合は、悪臭のある膿のような鼻水、鼻づまり、歯や頬の痛み、目の下の腫れや痛みなどが現れますが、慢性の場合は目立った症状が見られないこともあります。
上顎洞炎の原因が歯にあるかどうかは、単純X線検査やCT検査で診断します。治療は、抗菌薬の投与や上顎洞の洗浄のほか、原因となっている歯の処置も必要です。根管治療や歯周病の治療を行っても改善しなければ、抜歯をしなければなりません。また、上顎洞に近い歯の抜歯によりできたスペース(抜歯窩)が上顎洞に貫通する場合があるので、同時に閉鎖する必要があります(図4)。歯性上顎洞炎にならないためには、軽症のうちにう蝕(虫歯)や歯周病の治療を行うことが大切です。
