口を開けるとあごが鳴る・痛い、十分に開かない……は顎関節症?
ものを噛むときや口を開けたり閉じたりするときに、音や痛みが出ることはありませんか。身に覚えのある人は、あごの関節の異常やその周辺の筋肉の疲労などから発症する顎(がく)関節症かもしれません。なかには口が開けにくくなり、食事に支障が出るケースがあるため、早めの対処が大切です。
あご関節のクッションが変形し、周辺の筋肉に緊張・疲労が蓄積して発症
口の開け閉めには、あごやその周辺のさまざまな筋肉や関節が、相互に影響し合って複雑に働いています。とくに重要な働きをするのが、ほお骨とあごをつなぐ咬筋(こうきん)と、耳の周辺にある側頭筋、そしてあごの関節である顎関節の中にあってクッションの役割をしている関節円板です。耳の穴の少し前あたりを指で触れながら、あごを開け閉めしたときに動くのがあごの関節です。
さまざまな要因により、これらの筋肉に緊張や疲労が蓄積し、関節円板が変形したり、位置がずれてくると、顎関節症を引き起こすと考えられています。次の3項目のうち1つでも該当すれば顎関節症の可能性があります。
●顎関節症のセルフチェック(主な症状)――1つでもあてはまれば顎関節症の疑い
□ 口を開け閉めすると、カクカク、カクンカクンなどの「音がする」(音の感じ方・聞こえ方は人によって異なります)
□ 口を開けるとあごの関節やその周辺の筋肉が「痛む」
□ 口が十分に開かない。人差し指と中指をそろえて上下にした状態(指2本分)ほども「開かない」
原因はさまざま。なかでも多いのは、歯を接触させるクセ
顎関節症の原因は、かつては「噛み合わせの悪さ」とされていました。しかし、現在では、さまざまな要因が重なり合って発症し、噛み合わせの悪さはそのうちの一つにすぎない、と考えられるようになってきました。ほかに、「ストレス」「歯ぎしり・食いしばり」「片側噛み」(「噛みグセで顔がゆがむ? 片側だけで噛む「偏咀嚼」を改めましょう」参照)なども顎関節症を引き起こしますが、なかでも多いのが「普段から上下の歯を接触させているクセ(TCH、歯列接触癖)」です。
今、みなさんの上下の歯は接触していますか、離れていますか。意外に思われるかもしれませんが、口を開けているときはもちろん、口を閉じているときも、上下の歯は接触していないのが普通です。接触するのは、食べ物を噛むときや飲み込むとき、話をするときなどに限られているのです。
歯ぎしりや食いしばりのクセがあればもちろん、歯を接触させるクセだけでも、咬筋や側頭筋を疲れさせ、顎関節に過剰な負担をかけてしまいます。顎関節症の患者さんの多くにこのクセがあるとみられており、舌やほおの内側に歯の跡がついている人は、このクセがあるかもしれないので注意が必要です。