「使える」場合もある“親知らず”むやみに抜かないで!
“親知らず”は清潔を保ちにくく、歯肉の炎症を起こしやすくなるうえ、炎症があごの骨にまで広がって顔が腫れたりする原因になることがあります。その一方で「使える」場合もあり、抜歯によるリスクも考え、むやみに抜いてしまわずに適切な対処が必要です。
傾いて生えて一部が埋まった状態や、歯の骨の中に埋まったままも
奥歯(大臼歯)の最も後ろに生える“親知らず”は、「智歯(ちし)」とも呼ばれますが、正式には第三大臼歯といいます。通常の歯(28本)はおおよそ15歳くらいまでに生えそろいますが、親知らずが生えてくるのは10代後半から20代前半です。親が口の中を見ることもなくなる思春期以降、親の知らないうちに生えてくるから「親知らず」、などといわれています。
上下のそれぞれ左右に合計4本生えてくる可能性がありますが、まったく生えてこない人もいれば、生えてきても4本そろっていない人など、さまざまです。
生えてくる場合、まっすぐに生えてきても歯冠の一部が歯肉に埋もれていたり、傾いて生えて一部が埋まった状態や、さらには全体が歯の土台の骨の中に埋まったままというケースもあります。
歯肉の炎症が起こりやすくなる一方で、正常なら入れ歯やブリッジの土台に
親知らずが部分的に埋まっていたりすると、汚れがたまりやすくなるうえ、ブラッシングが行き届きにくいことから、歯肉の炎症(智歯歯周炎)を起こしやすくなります。この炎症があごの骨などに広がるとあごを中心に顔が腫れたり、噛み合わせの悪化から口を開きにくくなります。親知らずが通常の歯に障害を及ぼしたり(歯の骨を侵食するなど)、歯肉の炎症が通常の歯のほうに広がる恐れもあります。
これらのケースでは、炎症の広がりを抑え、通常の歯への悪影響を食い止めるために、親知らずの抜歯を検討することになります。ただし、抜歯には感染症のリスクが伴い、親知らずが斜めに生えていたり、歯全体が埋まっている場合などでは、歯肉を切り開いたり、歯や歯の骨を削るリスクもあります。
一方で、親知らずが正常に生えて互いにきちんとかみ合っており、奥歯として機能している場合などは、残しておいたほうがよいと考えられます。親知らずの手前の奥歯が抜けた場合などにブリッジや入れ歯の土台として利用できるほか、移植にも利用できることがあります。また、親知らずが歯の骨の中に完全に埋まっていて、周囲に影響を及ぼしていない場合も、抜けなくてよいと考えられます。