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今からでも歯は動く! 知っておきたい「大人の歯列矯正」

今からでも歯は動く! 知っておきたい「大人の歯列矯正」

 歯がでこぼこに生えている、歯が前に出ている、あるいは上の前歯より下の前歯のほうが前方に出ている……。これらの歯並びや噛み合わせの悪さが気になっていませんか。治したいけど、大人になってからでも治せるのか、どのような治療を受けるのか、治療しないとどうなるのかなど、「歯列矯正」について正しく知っておきましょう。

歯が動き、動いた位置で安定するまでに、大人は2~3年かかる

歯列矯正は、矯正装置を使って歯を望ましい方向に少しずつ動かすことで、歯並びの乱れや、それに伴う噛み合わせの悪さを改善する治療です。歯に対して横方向に力を加え続けると、力を加えた方向に少しずつずれていきます。このとき、歯の根元にあって歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)という骨や、歯と歯槽骨の間の歯根膜という線維に変化が起こり、健康な根元部分を維持しながら動くことになります。

歯列矯正は子どもに多く実施されています。おおむね、子どもは大人より歯槽骨や歯根膜の変化が速く進み、歯の動きもスムーズです。また、あごの成長を利用して歯を動かすスペースを作りつつ進めることになります。

一方、大人の歯は、歯が動いてその位置で安定するまで、一般的に2~3年かかるとされています。歯を動かすスペースをつくるために抜歯が必要になる場合や、骨格や歯の条件によっては動かす範囲が限られるため、そういった制限を解決するための手術なども行われています。

精密検査、歯型採取、歯周病治療……装置装着までに1年近くの場合も

歯列矯正で歯を動かすのはブレースと呼ばれる装置です。歯の表面に専用の接着剤で矯正器具であるブラケットを取り付け、ブラケットに付けられた溝に、アーチワイヤーという細い金属線を組み込んで使用します。ワイヤーの締め方を調整して、歯を動かしていきます。ブラケットの基本は金属製ですが、目立ちにくいセラミックスやプラスティックなどの、透明や半透明のブラケットも広く使用されています。周囲から見えにくくするために、歯の裏側に付けるブラケットもあります。

どのタイプでも、いったん装着すると患者自身では取り外すことができませんが、結婚式や病院での検査などのために、1~2日だけ、一時的に外してもらうことは可能です。

もう一つ重要な装置がリテーナーという装置です。ブレースで動かした歯が元に戻ってしまわないように、ブレースによる治療後に、動かした位置に歯を軽く留め置くための装置です。ブレースを外した直後は、食事と歯みがきのとき以外は、リテーナーを終日装着していることになります。その後は装着時間を短くしていきますが、就寝時だけはできるだけ装着し続けることが求められます。

歯列矯正を希望して受診しても、すぐに上記のようなブレースの装着が始まるわけではありません。まず、頭部や口全体のX線検査をはじめ、口の中の写真撮影、歯型の採取といった精密検査を受け、治療計画を説明してもらいます。

その後、事前処置として、歯列矯正に影響を及ぼす恐れのあるむし歯や歯周病の治療を受け、適切なブラッシングの指導を受けます。歯を動かすスペースづくりの抜歯は、このタイミングで行われます。ブリッジや詰め物・かぶせ物をしているときは、歯列矯正のために、一時的にはずす場合があります。これらの検査や治療などで、最初の受診から歯列矯正に入るまでに1年近くかかる場合もあります。

佐瀬 聡良 先生

監修者 佐瀬 聡良 先生 (佐瀬歯科医院 院長) 1984年日本大学松戸歯学部卒業。89年千葉県千葉市に佐瀬歯科医院を開院し、現職。2004年より日本大学松戸歯学部歯周治療学講座非常勤医局員も兼務。「臨床家のための実践ペリオセミナー」「歯科衛生士のための実践ペリオセミナー」講師なども務める。日本歯周病学会専門医、日本臨床歯周病学会認定医・指導医、米国歯周病学会会員。