喫煙者は歯周病に要注意! 気づかぬうちに悪化しているかも…
喫煙は全身の健康にさまざまな悪影響を及ぼします。喫煙者の体の中で最初に喫煙の悪影響を受けるのが口の中であり、喫煙が歯周病のリスクを高めることは明らかです。5月31日は「世界禁煙デー」。この機会に、歯周病のリスク低減をめざし、まだたばこを吸っている人は禁煙にチャレンジし、吸わない人は受動喫煙を避けるようにしましょう。
舌下をはじめ、口の中の粘膜にはたばこの有害成分が染み込みやすい
煙とともに喫煙者の口の中に入ったたばこの有害成分は、粘膜や歯肉に吸収され血管に入り込んできます。
口の中でも舌下を含む下側の粘膜は薄く、舌下錠をはじめとする薬の成分が染み込みやすいことが知られています。このため、たばこの有害成分も、口の中の下側を中心にすぐに粘膜に入り込んでしまいます。
口の中に入り込んだたばこの有害成分のうち、ニコチンは口の中の免疫を低下させることで、歯周病菌に感染しやすくします。タールは唾液の分泌量を減らし、歯周病の原因となるプラーク(歯垢)や歯石を歯に付着しやすくします。また、一酸化炭素は歯周組織への酸素供給を妨げ、歯肉に酸素が十分に行き渡らない状況を招き、プラークや歯石の形成を進行させます。これらの有害物質が、歯周病を発症・悪化させやすくするのです。
たばこの影響で歯周病のリスクが高まり、治療を受けても治りにくい
歯肉の腫れや出血は典型的な歯周病のサインですが、喫煙による歯肉の血行不良が続くと、プラークによる炎症で歯周病が進んでも、歯肉の腫れや出血が起こりにくくなります。また、ニコチンにより歯肉にメラニン色素が沈着して赤黒くなることから、炎症によって歯肉の色が変化してもわかりづらくなります。歯周病はもともと痛みもなく気づきにくいのですが、これらの条件が重なると、いっそう気づかないまま悪化しやすくなるのです。
喫煙を続けていると、ブラッシングをしたり、プラーク・歯石除去の治療を受けても、プラークができやすい状態のままとなり、なかなか治療が進まないことがあります。
こうして喫煙者はもちろん、非喫煙者でも受動喫煙経験のある男性では歯周病にかかりやすくなることが疫学調査で明らかになっています。ただし、禁煙すれば、歯周病のリスクを下げられることもわかっています。歯周病予防には、適切なブラッシング習慣や定期的な歯科健診・メインテナンスに加え、禁煙も大切です。