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適切な歯周病ケアが、認知症の予防にもつながる

適切な歯周病ケアが、認知症の予防にもつながる

歯周病菌は、単に歯周病を引き起こすだけでなく、糖尿病や心臓病など、全身の病気を招くおそれもあります。認知症もそのひとつで、認知症には効果的な治療薬がまだないことから、予防が特に重要です。認知症のリスクを少しでも減らすためにも、ブラッシングを中心とした適切な口腔ケアによる、歯周病の予防や改善が大切です。

脳の血管に流れ着いた歯周病菌により、脳の神経細胞がダメージを受ける

歯周病菌は、歯と歯肉の間の溝である歯周ポケットの中のプラーク(歯垢:しこう)中にすみついています。ブラッシングをはじめとする口腔ケアが行き届かず、そのままになっていると、やがて歯周病菌や炎症によってできる副産物が、歯肉の血管に入り込んで全身に回り、流れ着いた先のさまざまな臓器で病気を引き起こします。

このうち、歯周病菌が脳の血管に流れ着くと、自覚症状が出ない程度の小さな脳出血を起こすことがあります。これをくり返していると、脳の神経細胞がダメージを受け、認知症の中でも脳血管性認知症を招くおそれがあると考えられています。

認知症の中で最も多い、アルツハイマー型認知症とのつながりも

認知症の中で日本人に最も多いアルツハイマー型認知症にも、歯周病菌が影響します。アルツハイマー型認知症は、脳内にたまった異常なたんぱく質である「アミロイドβ(ベータ)」により神経細胞が破壊され、脳の萎縮が起こる病気です。

最近の九州大学大学院の実験で、マウスに歯周病菌を3週間連続で投与したところ、マウスの脳内にアミロイドβが10倍に増え、記憶力が低下しました。本来は、免疫細胞が歯周病菌を攻撃し体を守りますが、歯周病菌が多くなると、免疫細胞がそれを過剰に攻撃し、炎症が起こります。そのときにつくられる炎症物質が、免疫細胞自身を刺激してアミロイドβをつくりだします。さらに、全身に広がった歯周病菌が、脳以外の部分でもアミロイドβをつくりだし、それが血液にのって脳内に取り込まれることが判明しました*1

現在の研究段階ではマウスでの実験ですが、人間においても、歯周病菌はアルツハイマー型認知症の発症につながっている可能性が高いと考えられます。

佐瀬 聡良 先生

監修者 佐瀬 聡良 先生 (佐瀬歯科医院 院長) 1984年日本大学松戸歯学部卒業。89年千葉県千葉市に佐瀬歯科医院を開院し、現職。2004年より日本大学松戸歯学部歯周治療学講座非常勤医局員も兼務。「臨床家のための実践ペリオセミナー」「歯科衛生士のための実践ペリオセミナー」講師なども務める。日本歯周病学会専門医、日本臨床歯周病学会認定医・指導医、米国歯周病学会会員。