歯周病菌が引き起こす、命にかかわる誤嚥性肺炎
肺炎と歯周病。まったく異なる病気のように思われますが、実は密接な関係があります。肺炎のなかでも、誤嚥性肺炎の多くは歯周病菌が引き起こしているのです。誤嚥性肺炎は、加齢や病気療養などで体力が低下した人に起こりやすいとされていますが、若く元気なうちから歯周病菌を減らすための口腔ケアを習慣づけることが大切です。
口や舌、のどの筋力低下で、飲み込む力やせき込む力が低下して誤嚥(ごえん)に
のどの奥は、空気が通る気管と飲食物が通る食道とに分かれています。食べ物や唾液を飲み込んだときは、正しく食道に入るように気管はフタでふさがれます。
しかし、飲み込んだときに気管のフタが十分に閉まっていないと、食べ物や唾液が気管に入りそうになります。通常は、ここでむせてせき込むことで、食べ物などの異物を気管の外へ出します。
これが、加齢などにより口や舌、のどの筋力が低下すると、飲み込む力が低下し、気管のフタが閉まりにくくなります。そのうえ、むせてせき込む力も弱くなり、食べ物や唾液がそのまま気管に入り込んでしまうのです。本来、食道に入るべきものを誤って気管に飲み込むことから「誤嚥」と呼ばれます。
歯周病菌などの細菌が、異物に付着して肺に到達することで炎症を起こす
食べ物や唾液には、口の中のさまざまな細菌が付着していますが、正しく食道側に入れば、消化されるため問題にはなりません。しかし、気管側に入り、さらに肺にまで到達するとそこで炎症を起こすことがあります。
これが誤嚥性肺炎であり、原因となる細菌の多くは歯周病菌であったという報告もあることから、歯周病は誤嚥性肺炎の大きなリスクになると考えられるようになってきました。
また、歯周病菌と一緒に肺に到達した、肺炎を起こすほかの細菌の作用を歯周病菌が助けるとの見方もあります。
誤嚥性肺炎は命にかかわる重大な病気です。誤嚥性肺炎で死亡する人は増えており、2021年には5万人近くに達し、日本人の死亡原因の第6位となっています*1。つまり、誤嚥性肺炎を介して歯周病が命にかかわることもあり得るということです。