免疫力低下、唾液減少、歯ぎしり……ストレスで歯周病が悪化
古くから「ストレスは万病のもと」といわれていますが、歯周病もその1つです。歯周病の原因は口の中のプラーク(歯垢:しこう)であり、ストレスが直接、歯周病を引き起こすわけではありませんが、発症・重症化リスクを高めます。歯周病の予防や改善には、毎日のブラッシングを中心とした口腔ケアだけでなく、ストレス対策も大切です。
ストレスで歯周病菌が侵入しやすく、口の中にとどまりやすくなる
細菌やウイルスなどの外敵から体を守るために、体に備わっているのが「免疫」のしくみです。たとえ細菌などが侵入してきても、免疫力が高ければ病気にかかりづらく、低ければ病気にかかりやすく重症化もしやすいと考えられています。
ストレスをため込むと自律神経のバランスが乱れ、免疫力を低下させることから、歯周病菌による感染症である歯周病のリスクを高めることになります。糖尿病の人が歯周病になりやすく悪化しやすいのは、糖尿病による免疫力の低下も一因とみられています。
ストレスによる自律神経のバランスの乱れは、唾液にも影響します。ストレスによって自律神経の中でも交感神経の働きが活発になると、唾液の分泌量が低下します。
唾液には歯周病菌をはじめとする口の中の細菌を洗い流したり、ある程度は殺菌する作用もあると考えられています。このため、唾液の分泌量が減ると、こうした作用が弱まり、歯周病菌などが口の中にとどまりやすくなって、歯周病のリスクを高めることになります。
歯ぎしりや食いしばりを招き、歯を支える組織を傷め、歯周病が重症化
ストレスは、歯ぎしりや食いしばりを招くことがあります。ストレスがたまった興奮状態に対して、歯ぎしりや食いしばりは興奮を鎮めるホルモンなどの分泌を促すとされています。つまり、歯ぎしりや食いしばりでストレスを発散しているわけです。
歯ぎしりや食いしばりが癖になると、歯を支える組織に強く異常な力が加わり、歯周病を重症化させることになります。
また、私たちの体内の反応には、さまざまな生理活性物質(サイトカイン)と呼ばれる物質がかかわっています。歯周病に関しては、インターロイキンなどの生理活性物質が、歯を支えている骨(歯槽骨:しそうこつ)をもろくすると考えられています。
骨は、古い骨を壊して(骨吸収)、新しい骨をつくる(骨形成)ことを繰り返して健康な状態を維持していますが、インターロイキンは骨吸収を進めて骨形成を抑えてしまい、その結果、骨が減りすぎてしまうのです。ストレスはこのインターロイキンに影響を及ぼし、歯槽骨をもろくして歯周病の重症化を進めるといわれています。