エアコンなどの湿気やホコリで増える「カビ」…肺の病気を招くことも!
カビは人の皮脂や石けんのカス、ホコリなどをエサに高温多湿で繁殖する
梅雨から真夏にかけて、カビが生えやすくなります。カビは真菌類と呼ばれる微生物の一種です。カビは胞子を飛ばし、高温多湿(20~30℃、80%以上)の条件がそろった場所に付着して発生し、人の皮脂や石けんのカス、ホコリなどをエサにして繁殖します。
カビは、目には見えなくても、常に空気中に浮遊し、至るところに存在しています。それを人が吸い込むと、場合によっては、肺を中心にさまざまな病気を引き起こす恐れがあります。
カビの種類は約10万種類ともいわれ、一般的な家庭で、屋内には1m3当たり約1,000個のカビが浮遊し、1人当たり毎日約1万個ものカビを吸い込んでいるとみられています。ただし、特に持病もなく健康の場合は、カビを吸い込んでも、多くの場合、問題にはなりません。
アレルギー病・夏型過敏性肺炎や、命に関わる慢性肺アスペルギルス症も
一方で、カビの種類によっては肺にまで到達し、肺の炎症からしつこい咳などを引き起こすケースがあります。代表的なのは、「トリコスポロン・アサヒ」というカビによるアレルギー病である「夏型過敏性肺炎」です。
乾いた咳や微熱が続き、肺の炎症が進むと息切れするようになりますが、原因となるカビから離れたり、夏が終わると症状が治まります。しかし、とくに治療しないで翌年のカビの季節を迎え、咳込むことを繰り返していると、次第に肺の壁が厚く硬くなり、元に戻らなくなります。
もうひとつ、気をつけたいのは、「アスペルギルス・フミガーツス」というカビによる「慢性肺アスペルギルス症」です。こちらは微熱のほか痰を含む湿った咳が特徴であり、進行すると血痰が出たり、さらには呼吸不全から命に関わるケースもあります。カビで毎年約1,000人が死亡し、その半分はアスペルギルスが原因、との指摘もあります。
アスペルギルスは、発酵食品によく使われるコウジカビの一種であり、多くは無害です。しかし、フミガーツスなどの一部の種類が肺に感染し、すみつくと、肺の細胞を破壊しながら進行していきます。感染力も強力です。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)や結核が進行していたり、喫煙や加齢で肺の抵抗力が低下していると慢性肺アスペルギルス症が発症・重症化しやすいといわれています。
両方に共通する症状である微熱や咳、痰が続いている、あるいは、毎年夏になるとこれらの症状が出るといった場合、医療機関を受診するようにしましょう。
エアコンはフィルターの掃除や、使用後30分の「送風」で内部の乾燥を
夏型過敏性肺炎のトリコスポロン・アサヒは、水まわりなどの「湿気のある場所」、慢性肺アスペルギルス症のアスペルギルス・フミガーツスは、リビングや寝室、エアコンや網戸、照明器具のカサなどにたまった「ホコリの中」に多いとされています。
すなわち、これらのカビによる肺の病気を防ぐには、台所や浴室などの水まわりや押し入れ内の掃除によるカビ取りはもちろん、室内や浴室の換気、家具やエアコンなどにたまったホコリの除去などを通して、「湿気とホコリ」を抑えることが大切です。
なかでもエアコンの内部が結露によって湿気が高く、カビも生えやすいため、使い方によっては夏型過敏性肺炎と慢性肺アスペルギルス症の両方のリスクを高めてしまいます。
フィルターの定期的な掃除はもちろん、エアコンのスイッチを切った後に、30分ほど送風運転を続けてから電源を切るようにして、内部を乾燥させるようにしましょう。
また、エアコンや水回りの掃除の際は、長袖・長ズボンで、マスクや手袋を着用し、カビやホコリの吸引・付着を避けましょう。