『日本人の食事摂取基準2020』を生かし生活習慣病・フレイル予防
フレイル予防を目指し、高齢者を前期と後期に分けて目標量を設定
健康的な食事の目安となるエネルギーや栄養素の量の基準を示した、厚生労働省の『日本人の食事摂取基準2020年版』が2020年4月から使用開始となりました。同摂取基準は5年に一度見直されており、20年版の期限は24年度までです。
同基準の策定の目的として、2015年版では「健康の保持・増進」や「生活習慣病の発症予防・重症化予防」が掲げられていましたが、今回新たに「高齢者の低栄養予防・フレイル予防」が加わりました。フレイルとは、要介護になる手前の体力が低下した状態のことです。その観点から、主に以下のような改定が行われています。
- 50歳以上について、年齢区分を3つに変更
栄養素などの摂取基準(目標量)は年齢や性別ごとに設定されており、50歳以上の年齢区分は従来、50~69歳と70歳以上となっていました。これが20年版では、65歳以上を高齢者として、50~64歳、65~74歳(前期高齢者)、75歳以上(後期高齢者)と、3つに分類されました。 - 65歳~69歳のBMIの下限を引き上げ
適正体重を維持できているかどうかの指標となるBMI(体格指数、体重[kg]÷身長[m]÷身長[m])につき、従来、50~69歳は20.0~24.9、70歳以上21.5~24.9とされていました。しかし、高齢者の低栄養・フレイル予防などのためには「やせすぎ」に注意が必要であるため、新区分の65~74歳の人の目標も21.5~24.9となりました。
これにより、65歳以上の人の場合、例えば身長150cmであれば約48.4kg~56kgの範囲を、170cmであれば約63kg~72kgの範囲をめざすことになります。この年齢の人のやせすぎや食の細さが気になるときは、まずこの範囲を下回っていないかどうかを確認してみましょう。 - 高齢者のたんぱく質由来エネルギー量の割合の下限を引き上げ
フレイル予防のために、特に栄養素では筋肉のもととなるたんぱく質が必要です。そこで、総エネルギー量のうち、たんぱく質が占める割合について、高齢者の下限の目標量が引き上げられました。
従来のたんぱく質が占める割合は、18歳以上はすべて13~20%でした。これが50~64歳は14~20%、65歳以上は15~20%となりました。たんぱく質は肉類だけでなく魚や大豆・大豆製品などさまざまな食品からとることがすすめられます。
生活習慣病予防にいっそう「減塩」、重症化予防でコレステロールの目標も
以上は、高齢者関連の変更ですが、「若いうちからの生活習慣病予防の推進のため」として、次のような変更もありました。
- ナトリウム(食塩相当量)は1日0.5gずつ引き下げ。高血圧や慢性腎臓病(CKD)の重症化予防には「6g未満」
食塩の摂取目標量は毎回引き下げられる傾向にありましたが、今回も引き下げられ、1日あたり男性8g未満が7.5g未満、女性7g未満が6.5gとなりました。また、高血圧や慢性腎臓病の重症化予防のため目標量として、1日あたり6g未満が新たに設定されました。
ただし、高齢者の場合、極端な減塩はエネルギーやたんぱく質などの各種栄養素の摂取不足につながる恐れもあるため、柔軟な対応が必要とされています。 - 脂質異常症の重症化予防のためのコレステロール摂取目標は1日「200mg未満」に
食事からとり入れるコレステロールの目標量は設定されませんでしたが「許容されるコレステロール摂取量に上限が存在しないことを保証するものではないことに強く注意すべき」と明記されています。そのうえで、脂質異常症の重症化予防には、1日あたり200 mg未満にとどめるのが望ましいことが新たに記載されました。
栄養素別ではこのほか、18歳以上の1日あたりのビタミンDの摂取目標量が5.5μgから8.5μgに引き上げられています。ただし、日照により皮膚でビタミンDが産生されることを踏まえ、摂取量は日照時間を考慮することが求められています。 - 飽和脂肪酸について、小児の目標量(8%以下、10%以下)を新たに設定
肉類などの動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸は脂質異常症と深い関連があり、1日にとる総エネルギー量に対する飽和脂肪酸の割合を、18歳以上は7%以下に抑えるという目標量が設定されています。さらに今回、新たに小児の目標量が設定され、15~17歳は8%以下、3~14歳は10%以下となりました。
なお、小児に対してはこのほか、野菜や果物に多く含まれるカリウムの摂取目標量が新たに設定され、3~5歳は男女とも1日に1400mg以上、以降、年齢とともに増え、15~17歳は18~74歳と同じ男性3000mg以上、女性2600mg以上となりました。
生活習慣病予防には子どものころから、アブラのとり方に気をつけ、肉類に偏らず魚も十分にとって、野菜や果物もしっかりとることが推奨されたといえそうです。