サルコペニアと肥満を合併すると、認知症のリスクが増大
サルコペニア肥満はサルコペニア単独よりも活動の低下を引き起こす
順天堂大学大学院医学研究科の研究グループが、「サルコペニア肥満の人は、軽度認知機能障害および認知症のリスクが高い」という研究結果を発表しました。
サルコペニアとは、加齢により全身の筋肉量と筋力が低下する状態をいい、このサルコペニアと肥満が合併した「サルコペニア肥満」は、筋肉量が低下しているにもかかわらず、脂肪だけが落ちずに体に残ることで生じる肥満のことをいいます。
欧州では、サルコペニア肥満は、サルコペニア単独よりも日常生活の活動の低下を引き起こすことが報告されています。これは、体重の減少はないものの、筋肉量と筋力が低下している状態により、要介護リスクが高まっていることが考えられます。しかし、サルコペニア肥満と認知機能の低下との関連はこれまで明らかにされていませんでした。
サルコペニア肥満は、認知症リスクが正常の約6倍に
研究グループは、東京都文京区在住の65~84歳の高齢者1,615人(男性684人、女性931人)を対象にしたコホート研究において、身長・体重測定、握力測定、認知機能検査を実施しました。
BMIが25以上を「肥満」、握力が男性で28kg未満、女性で18.5kg未満を「サルコペニア」とし、肥満・サルコペニアに該当しない「正常」、肥満のみ該当する「肥満」、サルコペニアのみ該当する「サルコペニア」、両方該当する「サルコペニア肥満」の4つに分類し、各認知機能検査の点数や軽度認知機能障害、認知症の有病率を比較しました。
その結果、正常、肥満、サルコペニア、サルコペニア肥満の順で各認知機能検査の点数が低下し、軽度認知機能障害、認知症ともに有病率が増加していました。また、サルコペニア肥満があると、正常に比べて、軽度認知機能障害のリスクが約2倍、認知症のリスクが約6倍に上昇することが明らかになりました。認知症では、サルコペニアだけでも正常の約3倍のリスクになることもわかりました。
バランスのよい食事と有酸素運動の習慣化で、サルコペニア肥満を防ごう
現在の日本では、認知症は介護や支援を必要とする理由の約18%を占めており*、認知症になるかならないかは、老後の暮らしに大きくかかわってきます。
サルコペニアの予防には、筋肉のもととなる良質なたんぱく質の摂取が重要です。肉や魚、卵や大豆、乳製品に加え、野菜などバランスよく日々の食事に取り入れていきましょう。そして、肥満を防ぐためには、ウォーキングやストレッチなどの軽い有酸素運動を習慣化することが大切です。
体型がスラリとした人でも、知らず知らずのうちに進行している可能性があるのがサルコペニア肥満。日々の生活習慣に気を配り、サルコペニア肥満を防ぐことが、認知症や寝たきりに悩まされない快活な老後への近道となります。
参考文献
- *厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」より