30代40代でも発症する腎臓がん。喫煙・肥満男性は特に注意
男性は女性の2~3倍かかりやすく、年間約2万人の男性が発症
今月(2016年4月)初め、30代前半の男性芸人が数年前に腎臓がんと診断され、摘出手術を受けていたことを公表。さらに、現在50代の男性俳優が40代半ばのときに末期の腎臓がんと診断され、手術を受けて現在は回復していることを告白して話題になりました。
腎臓のがんには、尿細管の内側の細胞ががん化してできる「腎細胞がん」と、尿路の細胞ががん化してできる「腎盂(じんう)がん」がありますが、ほとんどが腎細胞がんです(子どもの「ウイルムス腫瘍」も腎臓にできるがんですが、成人の腎臓がんとは異なります)。
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターの「2015年のがん統計予測」によると、腎細胞がんを含む腎・尿路系のがんの罹患数(その年に新たにそのがんにかかる人の数)や死亡数は、他のがんと比べるとあまり多くはありませんが、男性は女性の2~3倍多く発生します。男性の罹患数は19,900人、死亡数は5,900人と予測されており、どちらも男性のがんの10位以内です。
発症年齢は、他のがん同様に50代以降が中心ですが、20代~40代の若いうちに発症することもあります。
外科手術が標準治療。2016年4月からはロボット手術も保険適用に
腎細胞がんの治療としては、多くの場合、がんがある側の腎臓をすべて取り除く腎摘出術が行われます。開腹による方法と、腹腔鏡下で行う方法があり、生存率や再発率に差はありません。
また、がんや腎臓の状態によっては、腎部分切除術で腎臓の一部のみを切除することがあり、一部の医療機関では手術支援ロボットを使った腹腔鏡下腎部分切除術が行われています。この治療法は、以前は先進医療として実施されていましたが、2016年4月より、保険適用となりました。通常の腹腔鏡下手術よりも精度の高い操作が行えるため、一層安全で体への負担が少ない治療法として期待されています。
喫煙や肥満、高血圧がある、アスベストなどの暴露を受けている人は高リスク
腎細胞がんの原因には、遺伝的要因(発生しやすい家系)があることが知られていますが、一方で発生しやすい生活習慣があることもわかっています。
肥満がある人はそうでない人に比べて4倍、高血圧の人はそうでない人に比べて2倍、喫煙者は非喫煙者の2倍、腎細胞がんにかかりやすいとされており、これらのリスクが重なっている人はさらに注意が必要です。
また、長期にわたってトリクロロエチレン、カドミウム、アスベストといった化学物質の暴露を受けている人、人工透析を長く続けている人も腎細胞がんが発生しやすくなります。
腎細胞がんは、進行すると血尿や痛み、発熱、体重減少、貧血などが現れる場合もありますが、がんが小さいときには特徴的な症状があまりありません。そのため、健康診断や別の病気の検査で偶然発見されることが多くなっています。
リスクの高い人は、健康診断や人間ドックで超音波検査を受けるようにするほか、別の病気の治療中に超音波検査やCT検査、MRI検査を勧められたら、積極的に受けるようにして早期発見に努めましょう。