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受動喫煙がある日本人は、ない人に比べて肺がんリスクが1.3倍に

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日本人における受動喫煙の肺がんリスクが、統計学的に明らかに

先月(2016年8月)末、国立がん研究センターでは、日本人の非喫煙者の受動喫煙と肺がんとの関連について、複数の論文を統合・解析(メタアナリシス)した研究結果を公表しました。

それによると、受動喫煙のある人は、ない人に比べて肺がんにかかったり肺がんで死亡したりするリスクが約1.3倍で、国際的なメタアナリシスの結果と同様となっていました。

なお、統合・解析のもととなった9つの論文は、主に女性を対象とし、配偶者(夫)の喫煙による肺がんの影響について研究したものです。

「日本人のためのがん予防法」で、受動喫煙防止を明確な目標として提示

これまで、日本人における非喫煙者の受動喫煙の肺がんリスクについては、個々の研究では統計学的に有意な(偶然とは考えにくい、明らかな)関連が示されていませんでした。そのため、国立がん研究センター 社会と健康研究センターが研究・公表している「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価」において、受動喫煙が肺がんリスクを上げることは「ほぼ確実」とされていましたが、今回は複数の論文の結果を統合したことで、「確実」であることが示されました。

また、同様に、受動喫煙の乳がんリスクについても、これまで「データ不十分」とされてきましたが、今回「可能性あり」という評価に変更されました。

この結果を踏まえ、同センターが提示している「日本人のためのがん予防法」(現状において日本人に推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法)では、次のように文言を修正。受動喫煙の防止が、努力目標から明確な目標へと変更されました。

【変更前】たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける。
【変更後】たばこは吸わない。他人のたばこの煙を避ける。

「分煙だからOK」は間違い。喫煙者は確実に禁煙しよう

「家庭では吸わないから」「ベランダなど、家族のいないところで吸っているから」「吸った後は必ず換気しているから」受動喫煙の害がない、と考える人もいるでしょう。しかし、タバコの火を消した後でも、有害成分は衣類やカーテン、ソファなどに付着していて、家族に影響を与えることがわかっています。

実際に、家庭の喫煙状態ごとに乳幼児の尿中コチニン濃度を調査した研究では、「分煙(別の部屋で吸うか、吸ったあと換気したり空気清浄機を置くなどの対処をする)」と「自由に喫煙する」ではほとんど差が見られませんでした。

喫煙している人は、自分のためにも家族のためにも、今すぐ禁煙を。喫煙していない人は、家族に喫煙者がいれば禁煙治療を勧めましょう。