高齢者のがんは「治療なし」が多い-がんの拠点病院等の診療情報集計公表
全国にある、専門的ながん医療を行う拠点病院の院内がん情報を集計
今月(2017年8月)上旬、国立がん研究センターでは、「がん診療連携拠点病院等院内がん登録」による「2015年全国集計」と、「2008年5年生存率集計」を発表しました。がん診療連携拠点病院とは、専門的ながん医療を行う全国の携拠点病院のことです。。
高齢の患者さんは比較的進んだ病期が多く、「治療なし」の割合も高い
2015年全国集計は、2015年の1年間に診断された患者さんの診療情報を、がんの種類や進行度、その治療の分布を把握して、国や都道府県のがん対策に役立てることなどを目的として集計しています。9回目となる今回の報告では、高齢者の登録が徐々に増加していることから、75歳以上及び85歳以上のがん患者さんについての特別集計を行いました。
結果をみると、75歳以上のがん患者さんは全年齢の36.5%を占め、病期(ステージ)分布では、高齢になるほど比較的進んだ病期の登録が多くなっていました。また、75歳以上のがん患者さんでは、若い年代のがん患者さんよりも、部位や病期によって「治療なし」の割合が高くなっていました。がん以外に抱えている病気や、全身状態などの問題で、若い世代と同様の積極的な治療が難しいと推測されています。
部位別の生存率では前立腺がんが高く、膵臓がんが他部位よりも低い
一方、2008年5年生存率は、2008年の1年間に診断された患者さんについて、治癒の目安とされる5年を経過した生存率を集計したもので、2007年症例に続き今回が2回目の報告となります。今回は、主要5部位(胃がん、大腸がん、肝臓がん、肺がん、乳がん)に加えて食道がん、膵(すい)臓がん、子宮頸がん、子宮体がん、前立腺がん、膀胱がんが新たに追加集計されました。
結果をみると、施設全体での全がんの5年相対生存率は65.2%で、男性が58%、女性が42%と男性がやや多くなっていました。診断時の年齢は男女とも70歳代が最も多く、ほぼ半数が70歳代と80歳代の患者さんでした。
また、部位別の生存率では前立腺がんがほぼ100%と高く、膵臓がんはほかの部位よりも低くなっていました。乳がんはほかの部位よりも比較的若い世代が多く、10年生存率など長期的な視野で見ていくことが重要であると報告されています。
なお、今回は、主要5部位と新たに加わった6部位について、拠点病院全体及び都道府県別の5年生存率が集計され、主要5部位については拠点病院別の生存率も集計されています。しかし、国立がん研究センターでは、「生存率は、年齢やがんの進行状況、手術の有無等に大きく影響され、症例数が少ない場合は偏りも生じるため、ある程度長い対象期間をとり、大きな集団で数値の解釈を考えていく必要があります」とし、「都道府県別・施設の治療成績を示すものではありません」と強く主張しています。集計結果を参照する際には、その点に十分注意してください。