未成年者の飲酒は、健康に大きな害を及ぼす。周囲が止め、本人も断る勇気を
高校3年生の1割が月に1回以上飲酒。年間600人が急性アルコール中毒で救急搬送
毎年4月は、未成年者飲酒防止強調月間です。わが国では、1922(大正11)年の「未成年者飲酒禁止法」で未成年の飲酒が禁止されており、「健康日本21(第二次)」でも未成年者の飲酒をなくすことが目標に掲げられています。
しかし、厚生労働科学研究費補助金による研究班の2014年調査によると、「調査前30日間に1回でも飲酒した者の割合」は、中学3年生で男子7.2%、女子5.2%、高校3年生で男子13.2%、女子10.9%と、4年前調査に比べると大幅に減少しているものの、まだ高い数値となっています。
また、東京消防庁の調査では、2016年の1年間に600人もの未成年者が、急性アルコール中毒で救急搬送されていることがわかっています。
成人でも過度な飲酒は健康に悪影響。成長段階の心身にとっては大きな害に
大人でも、飲みすぎたり飲み方を誤ったりすると心身に悪影響がありますが、未成年ではなおさらです。たとえ体の大きさが大人と同じくらいでも、未成年者の心身は成長途中であり、さまざまな害があることが、国税庁や厚生労働省、内閣府などが作成した「未成年者飲酒防止パンフレット」にまとめられています。
・脳の機能を低下させる恐れがあります。
未成年者がお酒を飲み始めると、脳の機能低下により、うつ状態を引き起こしたり、学習能力・集中力・記憶力が低下したりします。特にアルコール依存症になると、年長者よりも飲酒期間が短いと考えられる20歳代の患者さんでも、明らかな脳の萎縮(いしゅく)が見られるといわれています。
・肝臓をはじめとする臓器に障害を起こしやすくなります。
多量の飲酒をすると、成人でも脂肪肝やアルコール性肝炎、肝硬変などの肝臓の病気が起こりますが、未成年者はアルコール分解酵素の働きが未完成のため、それらの危険性が高まります。
・性ホルモンに異常が起きる恐れがあります。
長期間大量に飲酒を続けていると、成人でも男性では勃起障害、女性では生理不順や無月経になることがあり、性的な機能が発達段階の未成年ではなおさらです。また、思春期前から飲み始めると、二次性徴の発現が遅くなるとされています。
・アルコール依存症になりやすくなります。
自分を律する力が十分とはいえない未成年者では、短期間にアルコール依存症になる危険性が高くなります。20歳代のアルコール依存症の人のほとんどが、約18歳で習慣的な飲酒を始めていたという調査もあります。アルコールには、麻薬や覚醒剤と同様に強い依存性があることを理解しておきましょう。
周囲の大人は未成年者の飲酒を見過ごさず、本人も20歳になるまで断る
未成年者の飲酒場所としていちばん多いのは、自宅であることがわかっています。周囲の大人はしっかりと監督して未成年者の飲酒を見過ごさないこと、軽い気持ちで未成年者に飲酒を勧めないことが大切です。また、未成年者本人も飲酒の危険性を十分に知り、たとえ勧められても毅然として断りましょう。今春大学生になった人など、飲み会に参加する機会が出てくる場合は、特に要注意です。
なお、わが国では2022年4月に、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正が予定されていますが、未成年者喫煙禁止法・未成年者飲酒禁止法は現行通り20歳を維持することとなっています。