CKD(慢性腎臓病)が進むと人工透析に…腎機能の検査値に要注意
CKDの重症化で、年間約3万9000人が新たに人工透析を開始
わが国では、平成28年末時点で約33万人が人工透析を受けており、年間約3万9000人近く(平成28年調査)が新たな透析患者になっている――。これは、今月(2018年7月)中旬に厚生労働省が発表した「腎疾患対策検討会報告書」による、最新の報告です。
人工透析とは、人工的に血液のろ過作業を行う治療で、「CKD(慢性腎臓病)」が重症化した際に必要となるものです。CKDは、腎機能が徐々に低下していくさまざまな病気の総称で、わが国の成人の約8人に1人、約1,300万人がかかっているとされています。腎機能は、よくない生活習慣や加齢によって低下するため、誰でもCKDにかかる恐れがあります。
死亡や要介護にもつながるCKD。健診では尿たんぱく、クレアチニンなどを確認
CKDに含まれる病気には、糖尿病による「糖尿病性腎症」や、さまざまな難病などで起こる「慢性糸球体腎炎」、高血圧や加齢による「腎硬化症」などがあります。重症化すると人工透析が必要になったり、腎不全で死に至ったりするだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞などの循環器系の病気を合併しやすいことが知られています。循環器系の病気は日本人の死因上位であり、要介護となる要因の上位でもあります。いつまでも健康で長生き=健康長寿を目指すには、CKDの予防・改善が欠かせません。
とはいえ、腎臓は「沈黙の臓器」といわれており、CKDになっても自覚症状はあまりありません。むくみや貧血、めまい、疲れやすいといった症状に気づいたときには、重症化しているというケースが少なくないため、健診等での早期発見・早期治療が重要となります。
健診では、「尿たんぱく」、「尿潜血」、「尿沈渣」、「血清クレアチニン」などの値が指標となるので、健診結果をきちんと確認し、追加検査が必要な場合は、早めに受けるようにしましょう。なお、これまで特定健診に含まれる項目は「尿たんぱく・尿潜血」のみでしたが、2018年4月より、血圧または血糖値が保健指導判定値以上で、医師が必要と認める人に対して、血清クレアチニン検査が追加されることとなりました。
10年後までに年間新規人工透析導入患者数を4,000人以上減らす
わが国では、「2028年までに、年間新規透析導入患者数を35,000人以下に減少させる」という目標を掲げ、CKDの普及啓発、医療体制の整備などに取り組んでいます。また、今月、腎臓病の克服を目指して日本腎臓学会などが「日本腎臓病協会」を発足しました。
今後ますますCKD対策が進んでいくことが期待されますが、まずは一人ひとりが適切な食事、運動、睡眠などの生活習慣に気を配り、健診を活用して、CKDの予防・早期発見に務めることが大切です。