30~40歳代でも起こる「くも膜下出血」。家族に患者がいる人は脳検査を
脳の動脈にできたこぶが破裂する病気。男性より女性に多い
先月(2019年6月)中旬、80代の男性芸能事務所社長が、解離性脳動脈瘤(かいりせいのうどうみゃくりゅう)破裂による「くも膜下出血」を発症し、緊急搬送されていたことが報じられました。7月1日現在も入院治療中とのことです。また、5月末には40代の女性タレントが発症しましたが、リハビリを行っており順調に回復しているとの報道もありました。
くも膜下出血は、脳卒中(脳血管障害)のひとつです。先述のような脳動脈瘤(脳の動脈にできたこぶ)の破裂や頭部外傷などがきっかけで、脳を覆う「くも膜」と脳の間に大量に出血し、脳全体が圧迫される病気です。わが国では、原因のほとんどが脳動脈瘤破裂で、年間10万人に約20人の発症率とされています。また、男性よりも女性のほうが1.5倍多く、30~40歳代でも発症することがあります。
これまで経験したことのないような強い頭痛が突然起こり、長く続く
くも膜下出血では、「うしろからバットでなぐられた」といわれるような、激しい頭痛が突如起こり、途切れることなく続きます。痛みと同時に、吐き気や嘔吐、うなじの凝りといった症状も起こります。強い痛みの起こる数日前に、突然軽い頭痛が起こっているケースもあります。
脳内の出血量が多い場合は意識不明となったり、突然死してしまうこともある、危険な病気です。発症した人の約半数は回復しますが、約23%の人が亡くなり、約29%の人に後遺症が残る*と報告されています。
発作後は、脳動脈瘤の再破裂を予防するために発症24~72時間以内に手術を行うことが一般的です。手術には、脳動脈瘤の付け根にクリップをかけて再破裂を防ぐ「脳動脈瘤頸部クリッピング術」と、脳動脈瘤の中に白金コイルを入れて再出血を防ぐ「コイル塞栓術」があります。
発症後2週間以内に、脳血管が収縮して血流が悪くなる「血管れん縮」という状態が起こることがあり、命やその後の障害の有無などにかかわってきますが、血管れん縮を確実に取り除くことのできる治療法はありません。
*「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握(日本脳卒中データバンク)」報告書;2018 年」
家族や親戚に発症した人がいる場合は、脳の画像検査を
くも膜下出血は、両親や兄弟、祖父母に発症者がいる場合、いない場合に比べて発症率が約3倍になるといわれています。当てはまる人は、脳ドックなどで脳動脈瘤の検査(画像検査など)を受けておきましょう。また、突然、経験したことがないほどの激しい頭痛に見舞われたときは、すぐに救急車を手配してもらうようにしましょう。